こころ温まるアイスキャンディー

 

                                              木陰を求めて

    

 

私は先日、友人の家に遊びに行きました。

彼の家は、田舎の私の家と違って、町なかで便利な場所にあります。

 

彼の家で楽しい時間を過ごしましたが、冷たいものが食べたくなりました。

私は暑い中、歩いてコンビニにアイスを買いにいきました。

 

家から歩いて5分くらいのところにコンビニがあるのですが、たった5分歩いても

汗が流れ出て体が熱くなります。

 

コンビニに入ると、冷房が効いていて、とても気持ちがいいですね。

 

特に暑い時には、アイスクリームよりも、アイスキャンディーのほうが

さっぱりして好きです。

 

私は彼と一緒に食べようと思い、数本入りの箱に入ったアイスキャンディーを

買いました。

 

私がアイスを買って帰る途中、おばあさんが汗をかきながら辛そうに歩いていました。

帽子をかぶっていますが、この暑さでは、あまり役に立たないように思いました。

 

足取りが重く、よろけながら歩いているので私は心配になり、「おばあさん、こんなに

暑いのに外を歩いても大丈夫ですか?」と声をかけました。

 

私は少し休みましょうと、彼女を木陰に誘いました。

木陰に吹くさわやかな風は、少し彼女を落ち着かせました。

 

私はどうしてこんなに暑いのに歩いているのかと聞いてみました。

彼女は亡くなったご主人のお墓参りに行って、その帰りのようでした。

 

彼女はご主人を今年の初めに亡くし、毎日欠かさずお墓参りをしているようでした。

季節の移り変わりを感じることに少し鈍感になっているのかもしれません。

 

私は、「こんな暑い日はお休みしたほうがいいですよ」と言ったところ、彼女は、

「主人が亡くなる前は、病気で苦しんでいるのに何もしてあげられなかった、

 

それを思うと、これくらいの暑さなんかで、お墓参りを休むことはできない」と

言いました。

 

今彼女にできることは、一日も欠かさずお参りをすることだそうです。

彼女のご主人に対する愛情は、暑い日差しよりも熱かったのです。

 

彼女はひとり暮らしで、家にいても誰とも話すことがないので寂しくて、

ご主人のところに行って、話をするのが一番の楽しみだそうです。

 

この暑さの中を歩いて、汗びっしょりになった彼女を見て、私は熱中症

ならないかと心配になりました。

 

私は、「こんな暑い日には、お墓参りはしないで、家でゆっくりして

いたほうがいいですよ、そのほうが天国のご主人もあなたの健康を考えて

 

喜んでくれますよ」と言いました。

 

そして、さっき買ったアイスキャンディーを取り出し、彼女に食べてもらいました。

 

すると彼女は、「今まで食べたアイスのなかで一番美味しい、身体が冷めるのに

こころは温かくなる」と驚き、感激しました。

 

こんな人情の味がするアイスは生まれて初めて食べたと喜んでくれました。

一人暮らしで寂しい彼女にとって、私の気持ちがうれしかったのでしょう。

 

彼女は、「このアイスキャンディーの棒を持って帰って、仏壇にお供えする」と

言いました。

 

私はそれはさすがに冗談だと思って、ポケットからサインペンを取り出して、

「私はあなたをこころから愛す(アイス)」と書いて彼女に渡しました。

 

私は冗談のつもりで書いたのですが、彼女は真剣に受け取って帰りました。

人生にはこんなギャグで、こころを和ませるのもいいのではないでしょうか。

 

きっと、天国のお爺さんも笑っていることでしょう。