愛のメロディー

 

私は車を運転している時も、歩いている時も、あのブーという

ラクションのけたたましい音が大嫌いです。

 

それも長く何度も鳴らされると、とても不快に感じます。

 

私の住んでいる所は田舎なのですが、職場は街中にあり、車通勤の私は

朝の通勤時間の渋滞には少しイライラします。

 

私は会社に遅刻するのが嫌なので、いつも、朝少し早めの時間に家を出ます。

先日、朝の通勤途中、私は左折のために信号待ちをしていました。

 

そこは青信号の時間が短く、左折した先には横断歩道があり、歩行者が

多い時には青信号でも数台しか左折できません。

 

左折待ちの車が多いときは信号2、3回待ちになってしまいます。

 

信号が青になって私は左折しようとしましたが、前に数台車が待っていて、

運悪く左折直前で信号が黄色に変わりました。

 

朝の忙しい時間帯、他の車は黄信号でも無理して左折するようでしたが、

私は安全運転を心がけているので停止しました。

 

すると後ろの車からどうして進まないのかと激しくクラクションを鳴らされました。

恐らく、私が左折すれば後ろの車も私の車について左折しようとしたのでしょう。

 

後ろの車は急いでいたのかも知れません、1回の信号待ちが我慢できなかった

ように思いました。

 

でも私はクラクションを鳴らされていい気持ちはしませんでした。

 

私が間違ったことをしたら注意されても仕方ありませんが、そんなことは

ありませんでした。

 

私は一瞬、煽り運転のドライバーの気持ちがわかるような気がしました。

私はこころの中の悪魔を暴れないように鎮めました。

 

私は悔しくてバックミラーで後ろの車のドライバーの顔を見ました。

 

驚きました、後ろの車のドライバーは見るからに真面目で善良そうな

中年の女性です。

 

こんな人がどうして私の運転にクラクションを鳴らしたのか不思議に思いました。

でも人は見かけによらないもの、その女性のこころの正体を見たような気がしました。

 

ラクションは言葉を発しません、ただ大きな音を出すだけです。

 

ラクションは人の気持ちを気遣うものではありません。

なので、鳴らす人と聞く人によって感情が大きく違うことがあります。

 

車の運転をすると普段とは人格が変わる人がいると聞きます。

彼女は、車から一歩出ると私と同じで、お人好しで小心者かも知れません。

 

もしかしたらその人は私が黄信号で急に止まったので、急停止は危ないから

流れに沿って運転しないと危ないですよと注意してくれたのかもしれません。

 

私は車を降りてなぜクラクションを鳴らしたのか理由を聞きたかったのですが、

そんなことをしたらきっと相手は怖がるでしょう。私がされても怖いです。

 

私はほとんどクラクションを鳴らすことはありません。

 

あるとすれば、他の車が駐車場からバックで道に出る時、私の車が近づいて

いるのに気付かない時くらいです。

 

今のイライラしてこころに余裕のない人が多い時代に、あの非情なクラクションの

音は合わないと思います。

 

危険防止には役立ちませんが、私はブーという音ではなく、アイ ラブ ユー  愛のメロディーを鳴らせば世の中が平和になるような気がします。

 

でもよく考えると、私はクラクションの音くらいで腹を立てるこころの

狭くて貧しい人間なのでしょうね。

 

生きていくことの厳しさに、人を愛する気持ちを忘れていたかも知れません。

 

ラクションは、私に、もっと人生にゆとりを持って穏やかに暮らしなさいと

警鐘を鳴らしているのかも知れませんね。

 

彼女のクラクションの音は不快でしたが、実は、私の生き方を考えさせてくれた

やさしい愛のメロディーだったのかも知れません。❤❤❤