先が見えない不安

 

前回のお話しの続きです。

(娘のいたずらで、ホワイトデーに「妻と別れます、あなたの子供が欲しい」という

メッセージを彼女に贈ってしまい、恥ずかしかったお話です。)

 

私と彼女は、前回のホワイトデーの件をきっかけにして、とても親しくなりました。

それまでは普通の仲でしたが、それ以来、冗談が言えるような仲となりました。

 

時は流れ、また、翌年のバレンタインデーがやって来ました。

私がお昼に食事をしていると、彼女が私の前に座って、チョコを差し出しました。

 

そして私に、昨年のように私を惑わせないでくださいねと笑って言いました。

私は昨年のことを思い出して苦笑いをしました。

 

せっかくなので私は彼女に、何か困っている事はないかと聞いてみました。

すると彼女は、自分は心配症なので悩みが多いと言いました。

 

主人に先立たれ、これからの人生、どうなるのかまったく予想ができないのが

不安だと言いました。

 

初めての出来事、初めての環境など、経験したことや見たことのない世界は

とても不安だと言いました。

 

先が見えないことが、彼女にとって、一番の不安のようでした。

 

彼女は歯医者さんに行った時の治療を例に出して、目隠しをされて治療を

受けるのはとても不安だと言いました。

 

でも、やさしいお医者さんが、今から注射を打ちます、少しチクリとするかも

しれませんよと、先に教えてくれると安心すると言いました。

 

彼女は、レールの敷かれていない、障害物だらけで先の見えない暗闇の

トンネルの中を歩いているようだと言いました。

 

彼女は歯医者さんのような、人生の道先案内人がいてほしいと言いました。

彼女は私に、どうしたらいいのでしょうかと聞いてきました。

 

私は彼女に言いました、「多くの人を愛しなさい、あなたの愛がきっとあなたを

トンネルの出口へ導いてくれることでしょう」と答えました。

 

彼女は笑って、「じゃあ、私のあげたチョコの中に入っているメッセージを

しっかり読んで下さいね」と言って立ち去りました。

 

私は家に帰って、彼女からもらったチョコについているメッセージを読みました。

 

「親愛なるあなたへ、昨年、奥様と別れて子供を作りたいと言われたお話は

どうなりましたか?私はもう、あなたを愛して1年も待っているのですよ」と

書かれていました。

 

私は彼女のジョークに大笑いしました。

 

私は翌日、彼女に会ってバレンタインのお礼を言いました。

そして、妻と別れるのはもう少し待ってねと笑いながら言いました。

 

私は彼女に、ほかに何か心配事はないかと聞いてみました。

彼女は、死んだ先のことがわからないからとても恐怖だと言いました。

 

彼女は火葬場で焼かれ、遺骨となって遺族に収骨される場面を思い浮かべる

ことがあるそうです。

 

そのとき、自分のこころはどこに行ってしまったのだろうかと考えると恐怖を

感じるそうです。

 

彼女は私に、こころの行き先はどこなのか教えてほしいと言いました。

 

私はその答えを、今度のホワイトデーのお返しのメッセージに書いてあげると

言いました。

 

そしてホワイトデーに、今回は昨年のお詫びの気持ちで、少し豪華にみえる

スカーフを贈りました。

 

メッセージには「親愛なるあなたへ、あなたは死後のこころの存在が

どうなるか心配していましたね。大丈夫、私を死ぬほど強く愛しなさい、

 

あなたの愛が強ければ強いほど、あなたのこころは私のこころの中で、ずっと永く

生き続けることでしょう」と書きました。

 

私も彼女にジョークでお返しをしました。

 

バレンタインデーとホワイトデー、義理の中にも人情を添えると楽しいですね。

 

あなたもホワイトデーには、すてきなメッセージを贈ってはいかがです