地獄の沙汰も金次第

 

最近はすっかり秋になり、私の大好きなウォーキングの季節となりました。

 

私は仕事のお休みの日に、お昼ご飯を食べて、今度はどんなタイトルの

ブログを書こうかなとゆっくり歩きながら考えていました。

 

すると私の後ろから、「あの、道をお尋ねしたいんですがいいですか」と

70歳くらいの男性が私に声をかけてきました。

 

その男性は公民館を探していたようで、私はいつもそこの2階にある図書館を

利用していたので、その場所はよく知っています。

 

私は歩いているとよく知らない人から道を尋ねられることが 多いようです。

 

そんな時、私は家に帰って洗面所で鏡を見て、声をかけやすい人畜無害な人って

こんな顔なんだと情けなく思いました。

 

話は戻ります、公民館までそこから歩いて15分くらいの距離でした。

私は暇だったので、公民館まで一緒に歩いて案内することにしました。

 

私が彼の家はこの近くなのかと聞いた途端、彼には普段話し相手がいなかったのか、

自分のことをべらべら話し始めました。

 

彼は奥さんに先立たれ、ここから遠く離れた場所にひとりで暮らしていましたが、

この近くに住む息子が一緒に住もうと強く言うのでこちらに来たようです。

 

彼の息子の家庭は嫁と小学校5年生の女の子の3人家族のようです。

一緒に住み始めた頃は何ごとも問題なく平和な生活だったようです。

 

息子の嫁は朝8時から12時までのパートで働いていて、午後からは子どもが学校から

帰るまで、彼とふたりっきりになる時間が多かったようです。

 

しかしだんだん彼と息子の嫁との相性が合わないのが分かってきました。

 

彼のそれまでの気ままな一人暮らしは、彼女にとって、許せないことが

多かったようです。

 

コーヒーを飲むとき砂糖を容器の周りに散らかしてもそのまま、トイレに

入ってもスリッパを揃えて出てこない、新聞を読んだらそのまま広げっぱなし。

 

みんなが揃って食べる朝ごはんも、好きなだけ眠る彼は遅れてひとりだけ。

その上、後片付けもしないで彼女にまかせっきり。

 

彼女はだらしない彼が大嫌いになり、軽蔑して罵るようになりました。

彼はする事なす事すべてを否定されるような気がして嫌でした。

 

そのうち、彼が何かをするとまた彼女が不機嫌になっていじめるんじゃないかと

おどおどするようになったそうです。

 

それで彼は、彼女と一緒になるのを避けて、いつも午後から出かけるようになり、

孫が夕方学校から帰る時間まで家に帰らなかったそうです。

 

ここまで話して公民館に着きました、私は帰ろうとしたところ、彼はこれから

話がいいところだから時間があるなら続きを聞いて欲しいと言いました。

 

ふたりは1階にある喫茶店に入り話しの続きをしました。

 

ある時、家族そろっての晩御飯のとき、彼はお酒を飲んでいい気分になったそうです。

嫁とふたりっきりの時は憂鬱ですが息子と孫がいれば楽しくお酒が飲めました。

 

そのとき彼は酔いに任せて自分の財産のことを話しました。

彼は定年まで同じ会社に勤め、入った会社は最初は小さな会社だったそうです。

 

その会社には従業員の持ち株制度があり、彼は若いうちから毎月の給料から一定額、

給料天引きで積み立てたそうです。

 

それから彼の会社はだんだん大きくなり、株式市場に上場することになったそうです。

上場して株価がついて彼は驚きました。

 

彼の積み立てた株は上場で何十倍にもなり、その後も株価は上昇し、なんと、

今売れば5000万円になるそうです。

 

それを聞いた嫁はその瞬間から鬼から女神に大変身したそうです。

それから彼が何をしても笑顔でやさしくしてくれるようになったそうです。

 

あれほど彼を罵っていた彼女はお金に目がくらみ、愛がある素振りをしました。

彼は嫁の豹変ぶりを見て、地獄の沙汰も金次第ということわざが浮かんだそうです。

 

彼は、偽りの愛でごまかしやさしくする嫁の態度が許せなくて、今でも午後から

出かけるそうです。

 

彼はお金の話をしたことで人のこころの醜さを見てしまい、後悔しているようです。

 

私はお金には無縁な人間ですが、彼の話しを聞いて、お金って人のこころを

大きく変える魔物のようなものだとつくづく思いました。

 

私はお金がなくても、誠実に生きれば、本当の愛は見つけられるものだと思いました。