ホワイトデー

 

もうすぐホワイトデーがやって来ますね。

 

私の若い頃はバレンタインデーにはたくさんチョコレートをもらって、

ホワイトデーのお返しは大変だったと記憶しています。

 

私の会社には女子従業員が男子社員の数より多くいて、

バレンタインデーには男子社員はみんなたくさんチョコをもらっていました。

 

私は年に一度の、タレントか芸能人になった気分でウキウキでした。

でも、もらうのはうれしいのですがそのあとが嫌でした。

 

私はどちらかと言うと、義理チョコのお返しをするのが面倒に思うタイプです。

 

私の娘が幼稚園に入る前のことでした。

その年私はバレンタインデーにチョコを10個もらいました。

 

もらいっぱなしはいけないので、ホワイトデー直前の日曜日に、重い気持ちで、

ホワイトデーのギフトコーナーに行きました。

 

予算は一人当たり500円から1000円くらいでしたが、何にすればいいのか

決めるのは億劫でした。

 

するときれいなハンカチがギフト箱に入っている見本を見つけました。

私はこれがいいと思って適当なハンカチを10枚選びました。

 

ところがホワイトデー直前だったため、包装するのに順番待ちで

かなり時間がかかるようでした。

 

私は長く待つのが嫌で、ハンカチとギフト箱を買って、包装は家で自分で

すると言って包装紙をもらいました。

 

すると店員さんが、メッセージカードも差し上げましょうかと聞いてきました。

見るといろんなメッセージの書かれた小さなカードがたくさんありました。

 

何枚いりますかと聞くので、20枚適当なメッセージカードをくださいと言いました。

私は20枚の中から適当なものを選んで入れることにしました。

 

家に帰って、もらったメッセージカードを見ると、ユーモアのあるものが

たくさんありました。

 

大分前のことなのでよく覚えていませんが、イメージでは、「スイーツ大好き

子豚ちゃんへ」とか、「愛より私はお金が好きです」とか、「四角い部屋を丸く掃く

 

几帳面なあなたへ」とか、「チョコでごまかす鬼ねえさんへ」など面白いメッセージが

たくさんありました。

 

私は失礼にならないようによく吟味して10枚選び、ギフト箱にハンカチと

一緒にいれました。

 

そして蓋をしようとしたとき、宅配便が届き、荷物を受け取りに玄関に出て

配達物を受け取りました。

 

そして戻った時、娘が残ったギフトカードを持って遊んでいました。

私は慌てて蓋をして包装紙で包み、ホワイトデーまで保管しました。

 

そして娘が遊んでいたギフトカードを数えると残り10枚あるはずが9枚しか

ありませんでした。

 

私は店員さんが間違えて19枚しかくれなかったのだと思い込みました。

 

そしてホワイトデーの当日、その人にふさわしいギフトカードの入った

ハンカチのギフトを10人に贈りました。

 

家に帰って私の選んだギフトカードを読んでくれたはずです。

翌日みんなに笑顔であいさつをしました。

 

ところが一人だけ、私が挨拶をしても、顔を赤らめ、目をそらして挨拶を

してくれませんでした。

 

いつもは挨拶をすれば必ず返してくれるのに変だなと思いました。

 

お昼休みに私が一人で食事をしていると先ほどの彼女が隣に座り、

小さな声で、昨日のギフト本当にもらってもいいのですかと聞いてきました。

 

実は彼女、1年前交通事故でご主人をなくし、子供がいなくひとりで暮らして

いました。

 

これは私からのあなたに対する気持ちだから遠慮なく受け取って下さいと

言いました。

 

彼女は、でもあなたには奥様がいらっしゃるのでしょうと聞いてきました。

 

私はいつもチョコは妻に食べてもらっているから、ホワイトデーのお返しを

しているのは知っているよと言いました。

 

でも、本当にこのハンカチをもらってもいいのかと再度聞いてきました。

 

私はなんか変だなと思って、彼女にどうしたのかと聞くと

 

彼女は私が贈ったハンカチギフトの中から2枚のギフトカードを取り出し

私に見せました。

 

1枚は「ありがとう、これからもよろしくお願いします」でした。

 

そしてもう1枚は「妻と別れます、あなたの子供が欲しい」でした。

 

私はとっさに思い出しました、娘が遊んでいたギフトカードが1枚足りなかったのを。

 

私と彼女は冗談が通じる仲ではなく、彼女はご主人を亡くし、寂しかったのがあり

彼女のこころを惑わしたのでしょう。

 

義理と人情と言われるように、義理のホワイトデーのお返しにも人情が存在する

ことがわかり、貴重な体験でした。

 

彼女には悪いことをしたなと思い、私は何度も何度も平謝りしました。

 

それ以来私はギフトカードはこころを込めて手書きにしています。