足の人差し指

 

私のブログは、今までの人生の中でこころに残ったことを思いだして

書くので、現在のことよりも過去のことが多くなっています。

 

今回は、以前、私がある支店に人事異動で赴任したばかりの頃のことです。

 

新しい環境と、初めて会った気ごころが知れない人たちと仕事をするのは、

慣れるまでとても神経を使います。

 

私の所属する部署の人たちとは1週間も経てば大体の性格はわかってきます。

大まかに、にぎやかな性格とおとなしい性格くらいはわかります。

 

その中間の人はそれから時間をかけて微妙な違いを理解していきます。

 

私は小心者なので、仕事をしながら、無難に思えるおとなしいタイプの人と

最初に仲良くなろうとします。

 

しばらくすると、そのタイプだけではなく、私に好意を持ってくれる人が

自然と見つかります。

 

私は相手がどんなタイプの人でも、私と仲良くしてくれる人は拒みません。

 

また、私とは性格が真逆で、私にはないものを持っている人にはとても

魅力を感じます。

 

話しは変わりますが、職場に慣れた頃、他の部署にとてもきれいな女性社員が

いるのに気付きました。

 

笑顔がとても素敵で、時どき私に挨拶してくれましたが、そんな時の私のこころは

とてもさわやかになりました。

 

彼女は私にはない、美しさと品格を持った、私とは真逆な人に見えました。

私は彼女と一緒に仕事ができたらしあわせだろうなと思いました。

 

でも私のように、仕事ができなくていつも上司に叱られるダメ人間と比べて

彼女は同じ会社にいながら、住む世界が違う人のように感じました。

 

それから数か月後に、会社の飲み会がありました。

 

私はあまり会社の飲み会は好きではありませんでしたが、誘われると断り切れず

いつも参加していました。

 

そのとき、先ほどの彼女と偶然にも隣の席に座ることになりました。

 

私はラッキーと思う反面、何をしゃべろうかと緊張しました。

その前に、私と仲良くしゃべってくれるのかどうか不安でした。

 

最初、彼女は私を無視したかのように、私と反対側に座っている女子社員と

ばかり話をしていました。

 

そのうち飲み会も盛り上がり、私もアルコールが入り、だんだん気が大きくなって

彼女に話しかけてみました。

 

話しをしてみると、とても気さくな女性で、第一印象とはまったく違っていました。

とにかくおしゃべりで、友達と話すように、べらべらしゃべりました。

 

彼女は私に、昨日、家の中を歩いていた時、足の人差し指を椅子にぶつけてしまい

今でも痛いと言いました。

 

私は彼女に、あなたは足で人を指さすのかと言うと、彼女は、足に人差し指が

あるなんて変ですねと言い、ふたりは大笑いしました。

 

それをきっかけに彼女との会話は弾んでいきました。

私は彼女の足の人差し指に感謝したいと思いました。

 

しかし、彼女と話しているうちに、私がイメージしていた人とはだんだん

かけ離れてきました。

 

その美しさとは裏腹に、彼女は内面が乏しい人のように思えました。

本当はそうでもなくて、私の期待が高すぎてそう感じたのかもしれません。

 

私は彼女と親しくなったのと引き換えに、高貴なダイヤのようだった彼女は

そこらに転がっている石ころのように思えてきました。

 

彼女はいつまでも、私のこころの中できれいに輝いてほしかったのですが。

 

それから別の日、私は会社で会って彼女に挨拶をしたとき、あなたはきれいだけど、

それに合ったおしゃべりや行動しないとその落差に人は驚くよと言いました。

 

すると彼女は、私は気取って生きるよりも、ありのままに普通に生きるのが

好きなんですと言いました。

 

彼女の外見の美しさは、普通である彼女の内面と比較することで、彼女の品格を

引き下げてしまうような気がしました。

 

彼女は美人だけに、普通にしているとそのイメージとの落差で、損をするんですね。

 

もし私が美男子だったら、品格をそれに合わせるためには彼女以上に相当努力を

しなければならないでしょうね。

 

それを考えると、私は美男子に生まれなくてよかったとこころから思いました。

 

私は見栄えが悪いので、彼女とは正反対で、普通にしていても上品に見えるのです。