ダイヤの指輪とおでん

 

今回は、私の今年の初夢をもとに、ドラマチックに書いてみました。

 

        とても美しい女性のお話し

 

彼女は子供の頃から目鼻立ちがはっきりしていて、ハーフのような感じでした。

成長するにつれて、小顔でバランスの取れた美人になりました。

 

歯並びも良く、白い歯ときれいな肌は、清潔感を感じさせます。

その上、スタイルも抜群で、非の打ちどころがありませんでした。

 

大勢が集まる女性の会合では、彼女はひと際目立ち、輝いて見えました。

周りの女性は彼女を見て、誰もがその美しさを羨ましがりました。

 

彼女は生まれながらのその美しさに優越感を持ち、鏡を見てはそこに映った

自分の美しさに酔いしれました。

 

彼女は自分の美しさをさらにグレードアップするために、美容クリニックや

エステサロンに通い、ブランドの洋服やバッグ、アクセサリーで着飾りました。

 

ところが彼女は美しさに磨きがかかることにより、人のこころが離れていくのに

気付きました。

 

多くの女性は、うわべでは彼女の美しさを褒めますが、その裏には彼女に嫉妬する

こころがありました。

 

また多くの男性は、彼女の品位ただよう洗練された美しさに緊張して口ごもり、

気楽に話をしてくれませんでした。

 

彼女はだんだん孤独を感じるようになりました。

 

ある日の夕方、彼女は公園のベンチで我が身の寂しさをひとり思い詰めていました。

するとそこへ、現場監督ふうの作業員が近づいてきました。

 

彼はまさしく現場監督で、近くの工事現場から仕事を終えて帰る途中でした。

 

彼は若いころから土木の工事現場で働き、たくさんの苦労をし、多くの人の気持ちを

理解することで人間味があり、信頼され、今では現場監督を任されていました。

 

彼は彼女があまりにも深刻そうな様子で考え事をしていたので、心配になって

声をかけました。

 

汚れた作業着に品のなさそうな彼を見て彼女は驚き、何かをされるのではないかと

恐怖心を抱きました。

 

彼女のこわばった顔を見て、彼は、これではいけないと思いました。

 

彼女の警戒心を解くために、まず彼は、自分がどんな人間で、何をしているのか

なぜここにいるのか、なるべく彼女の目を見ないで、穏やかに話しました。

 

彼は彼女が話を始めようとする雰囲気づくりに長けていました。

 

人の気持ちを理解している彼は、どんな人とも打ち解ける自信を持っていました。

彼の言葉は着飾ったこころではなく、裸のこころで親友のように彼女に伝わりました。

 

彼の優しい言葉と態度は彼女の警戒心を解きました。

彼女のこころは彼の懐の広さと深さに導かれ、思いが言葉となって溢れ出ました。

 

そのとき彼女は、なぜか彼と話をしていると、これは運命的な出会いのように

感じました。

 

暗くなったので話の続きは、この近くにおいしいおでん屋があるから、一緒に

そこに行って食べながらしようと彼は言いました。

 

彼女はおでん屋のような大衆食堂に行ったことはありませんでした。

意気投合した彼女は、誘われるままに彼と一緒に、おでん屋の暖簾をくぐりました。

 

おでん屋の大将は、彼の連れてきた彼女を見て、店を間違えたのではないかと

不思議に思いました。

 

彼女はいつも行くおしゃれなレストランとは違って、違和感がありましたが

家庭的な雰囲気がありすぐに慣れ、こころの安らぎを感じるようになりました。

 

彼はおでんを注文し、彼女に、ここの大根はおいしいから食べてみなさいと

勧めました。

 

彼女がアツアツでよく味の染みたとろけるように柔らかい大根を食べた時、

彼は、この大根は人生そのものなんだよと言いました。

 

この大根には人生のように、甘み・塩味・苦み・酸味・旨味がすべて入っていて

その熱さと柔らかさで、こころが温まり、それを食べる人は幸せを感じる。

 

この大根は見かけはよくないけど、とても味わい深いのです。

あなたの指にはめているダイヤの指輪に幸せを感じますかと彼は言いました。

 

話していて、彼の人情味のある言葉はどれも彼女のこころに突き刺さりました。

彼女は生まれながらに美しかったのは、実は、不幸だったのでした。

 

彼女は表面的な美しさより、人の気持ちが通う、こころの美しさのほうが

大切だということをこのときつくづく感じました。

 

数年後の今では、彼女は下町の人情味のあるおばちゃんであり、(実は彼とは

私のことで)私の妻としてこころを大切にして生きています。

 

今年はとてもいい初夢を見ることができて幸せです