終活

 

私は病院が大嫌いです、なので体調が悪くなるととても不安です。

 

胃の調子が悪くなるとネットで胃の病気を検索します。

すると様々な胃の病気があり、どれも自分の症状に似ているように思えます。

 

軽い胃炎のようにも思えますし、胃がんのところを見ると私の症状に該当する

ような気もします。

 

そして最後に病気は早期発見、早期治療が大切ですと書いてあります。

でも私はなるべく病院には行きたくありません。

 

病院に行って診察を受け、医師に、あなたは末期がんですと言われるのが

怖いのです。

 

目の前が真っ暗になり、絶望感で気が狂いそうになるかもしれません。

今、私の人生のドラマの最終回を迎えるのは心残りです。

 

そんな死刑の判決を受けるために病院に行く必要はないと勝手に決めます。

 

私は自分を落ち着けるために、軽い胃炎の症状と決めつけ、市販の胃薬を

買って飲みます。

 

運よく今まで、ほとんど数日で胃の調子は回復しました。

私は胃腸に関しては大きな病気を患ったことはありませんが、

 

こんなことを続けていたら手遅れで、本当に人生のドラマの最終回を

迎えることになるかもしれませんね。

 

話しは変わりますが、少し前のことです。

 

私は仕事のお休みの日に、たまたまコンビニで、私の会社で以前支店長をしていた

男性と出会いました。

 

私と彼とは、ずいぶん歳が離れていて会社員時代にはたまにしか話をすることは

ありませんでしたが、彼は私のことを覚えていたようでした。

 

たまたま私を見つけて私に話しかけてきましたが、多忙な会社員時代と違って、

私とゆっくり話しをするのがとても楽しそうでした。

 

私たちふたりはコンビニの駐車場で少し立ち話をしました。

 

彼は会社を定年退職してからもう3年になったようです。

彼は今、仕事をしていないようでした。

 

そして奥様とはいわゆる熟年離婚で、ひとりで暮らしているようでした。

 

会社員時代は趣味もなく、仕事ばかりしていたので、退職後は時間を持て余す

ようになり、生活に張りがなくなったそうです。

 

生活にメリハリがなく、マンネリな生活が続き、何事にも感動することもなく

ただただ、時間だけが過ぎていく無味乾燥な日々だそうです。

 

忙しそうに先を急いでいる人を見ると、何か目的があって羨ましく思うそうです。

 

その日の仕事を終えた充実感で飲む、風呂上がりのビールのおいしさがとても

懐かしいと言いました。

 

彼の一番つらいことは、社会との繋がりがなくなり、自分が社会から必要と

されなくなって、たったひとりだと思うことのようでした。

 

会社員時代には多くの仕事仲間に慕われ、充実した人生を送っていましたが

今は誰とも付き合うことがなくて孤独な生活のようでした。

 

そして彼は、自分の健康のことをとても心配していました。

病気になっても頼れる人や看病してくれる人がいないのです。

 

私は相づちを打ちながら、彼の目を見て、こころから関心を持って、真剣に

彼の話を聞いてあげました。

 

彼はいつも話し相手がいないのか、私が熱心に彼の話を聞くので、気がつけば

30分以上時間が経っていました。

 

彼は孤独で寂しかったのかもしれません。

私は彼のおしゃべりに、繋がりを求める人間の本能を感じました。

 

その後、私は別れて去っていく彼の後ろ姿に人生のわびしさを感じました。

 

また話しは変わりますが、最近、終活という言葉をよく聞くようになりました。

 

私は終活と聞いて、残り少ない人生を嘆き悲しみ、自分の思い出と持ち物を

沈んだ気持で整理する活動だという、暗いイメージでした。

 

しかし、終活のことを調べて見ると、終活とは最期まで自分らしく生きるために、

そして後を託された人が困らないように人生最期に向けた準備を行うことのようです。

 

人生100年時代と言われますが私はさきほどの彼を見て、最期まで自分らしく

生きることの難しさを感じました。

 

私の病院嫌いは私のわがままであり、もし、大病を患えば最期まで自分らしく

生きていけなくなるかもしれません。

 

私は終活の意味を知って、自分のためにも後を託された人のためにも、体調が

少しでも悪くなれば病院に行こうと考え直しました。

 

私は終活と聞くとあまりいいイメージではありませんでしたが、長寿社会では

必要なものかもしれませんね。

 

元気でいつまでも自分らしく、こころ豊かに生きたいですね。