制服の似合う女性

 

私は田舎住まいなので、通勤はクルマを使用しています。

 

会社のある街中に入りますと、だんだん仕事の緊張感が増してきます。

今日も仕事辛いだろうなと思いながら暗い気持ちで運転します。

 

そんな気持ちで赤信号で停止している時、目の前の横断歩道を歩く着飾った女性を

見ると、なぜか私のこころは緊張感がほぐれ、安らぎを感じます。

 

通勤途中見る優美な女性は、私の仕事前の緊張感と憂鬱な気持ちを平和な気持ちに

してくれる天使のような気がします。

 

私はこの世の中に女性がいてよかったなと思います。

 

私の会社にもたくさんの女性が働いており、いろいろな服装で通勤しています。

 

季節感あふれるファッションや、地味でシンプルなカジュアルなど様々な洋服で

通勤しています。

 

しかし会社では制服が決まっているので、みんな制服に着替えて仕事をします。

 

ところが同じ制服でも、制服が似合う人も似合わない人もいますね。

私の部下の若い女子社員に、会社の制服がよく似合うなと思う人がいます。

 

彼女は特に美人だとかスタイルがいいという訳ではありませんが、清潔感があって

とても上品に見えました。

 

私は彼女に、制服がとてもよく似合うねと言いました。

すると彼女は私に、ありがとうございますと言って喜びました。

 

そして彼女は、制服だと服装を気にしなくていいし、洋服代がかからないので

助かると言いました。

 

私の会社の制服は、まるで彼女のために作られたもののような気がしました。

 

私は、彼女が地味な制服でもこれだけよく似合うのだから通勤の時に着る洋服は

どうなんだろうかと思い、興味が湧きました。

 

それから私は、時々、彼女が通勤の時着てくる洋服を見ることがありました。

ほとんどはシンプルな服装でしたが、清楚で彼女によく合ったものでした。

 

でも、時には派手な服装でおしゃれをしてくることもありました。

そんな時私は、制服を着た時の彼女と比べると全然魅力を感じませんでした。

 

それどころか、着飾った周りの女性の方がよほど魅力的に見えました。

私は彼女の魅力がぼやけたような感じがしてなりませんでした。

 

私は彼女が制服を着た時、なぜ魅力的に見えるのか不思議に思いました。

そこで私は、彼女のことをいろいろ聞いてみました。

 

彼女の話では、彼女が子供の頃、父親が何度も失業し、夫婦共働きでやっと生活が

できる貧しい家庭に育てられ苦労してきたようです。

 

彼女は今の仕事でもなんとか生活はできるのですが、決して楽な生活では

ありませんでした。

 

そのため、将来、両親を楽にしてあげたいと思い、なんとか今の生活から

抜け出したいと思っていたようです。

 

彼女には舞台俳優になる夢があり、そのために演技力と表現力の勉強をいつも

しているようでした。

 

彼女は主役を目指すのではなく、脇役として主役を引き立てながら良い演技を

することを目指していました。

 

彼女は舞台俳優になる夢と両親を楽にしてあげたいという優しさでこころが

輝いていました。

 

人が目標に向かって努力する姿はとても美しく見えます。

 

私は気がつきました、制服やシンプルな洋服は彼女のきれいなこころを

立派な主役として目立たせるための脇役だったのです。

 

なので彼女はきれいな洋服を着るより、制服や地味な服の方がよく似合いました。

 

私は、きれいな洋服を着てこころの汚れを隠す人より、地味な制服を着ても

きれいなこころを際立たせる彼女はとても素晴らしいと思いました。

 

その後彼女は舞台俳優にはなれませんでしたが、すてきな男性に巡り合い、

結婚し、ご主人を引き立てる名脇役としての役割を演じています。