しあわせのお店

 

今回はこころを売るお店のお話です。

 

あるところに、とても繁盛しているお店がありました。

そのお店の前を、人生に疲れ果てた女性が通りがかりました。

 

お店の看板には 「しあわせの店」あなたにすてきなこころをお選びします と

書いてありました。

 

彼女はどんなお店なのか気になって、お店の中をのぞいてみました。

 

そのお店は、ガラス張りで明るく、中の様子がよく見えました。

たくさんのこころがやさしそうな店員さんによって陳列されていました。

 

入り口のガラスには、「しあわせへの入り口ですどうぞお入りください」と

書いてあり、彼女は導かれるように店内に入りました。

 

お店に入る前、彼女はまず、ドアマットで憎しみや不機嫌なこころを取り除きました。

 

お店に入るとまず歓迎のこころが陳列されていて、上の棚にはたくさんの明るい

こころがあり照明がいらないほどです。

 

お店はとても広くて解放感があり、平穏でワクワクしたこころは彼女に喜びを

与えました。

 

お店の売場は、楽しみのこころ、嫌気のこころ、悲しみのこころ、恐れのこころ、

怒りのこころの5つのコーナーに分かれていました。

 

店員さんは、彼女がどんなこころを探しているのか、たくさんのこころの

整理をしながら彼女の様子をうかがっていました。

 

彼女は楽しみのこころのコーナーに行き、陽気なこころと愉快なこころのどちらが

いいのか手に取って迷っていました。

 

すると先ほどの店員さんが彼女に近づき、今、何かお困りごとはありませんかと

聞いてきました。

 

彼女は複雑な人間関係に疲れ、孤独で寂しい思いをしていると答えました。

 

店員さんは、でしたら安心のこころと共感のこころを一緒に買うことをお勧め

しますと笑顔で彼女に言いました。

 

彼女はそれはいいと思い、店員さんに値段を聞きました。

でもそれはとても値段が高くて彼女には手が出ませんでした。

 

彼女は店員さんに、もう少し安くはならないかと聞きました。

店員さんは、こころとは値切って買うものではありませんよと言いました。

 

貧しい彼女はとても高価な安心のこころと共感のこころは買えないと諦め

お店を出ようとしました。

 

そのとき店員さんは彼女に、あなたには嫌悪のこころ、裏切りのこころ、

わびしいこころ、悲惨なこころ、おびえるこころ、投げやりなこころは

 

ありませんかと尋ねました。

 

彼女は、それなら数えきれないほどあると言いました。

店員さんは、それならそれらを私の店で下取りに出せばそのぶんお安くなると

 

言いました。

 

彼女は早速、彼女のこころをお店のテーブルに並べました。

彼女が次から次へと並べているうちに、店員さんはもうそこで結構ですと言いました。

 

店員さんは、お客様にはあまりにも多くのこころがあるので、これだけで

もう十分ですと言いました。

 

彼女にはあまりにもたくさんの負の感情のこころがあったのです。

こんなにたくさんあれば人生に疲れるはずです。

 

店員さんは、これだけたくさんのこころを下取りに出してもらえば代金は

いりませんと言いました。

 

彼女はとてもいいお店だと感謝しました。

 

店員さんがふたつのこころを袋に入れて渡してくれた時、彼女は店員さんに、

あなたの好みのこころは何ですかと聞きました。

 

すると店員さんは、私が一番すきなこころは愛のこころですと言いました。

さっき彼女がお店の中で探していた中に、愛のこころは見当たりませんでした。

 

彼女はきっとそれは高価だと思いましたが、店員さんにお値段はいくらですかと

聞いてみました。

 

すると店員さんは、愛のこころはお金で売るものではありません、欲しい人には

いくらでも無料で差し上げますと言いました。

 

彼女はそれを聞いて、是非とも私にひとつくださいと言いました。

店員さんはこころの宝庫から愛のこころを取り出し彼女に渡しました。

 

彼女はとてもしあわせな気持ちになり、喜んでお店を出ました。

このように、このお店に来る人はみんなしあわせになって帰っていくのです。

 

このお店が繁盛するはずですね。  

 

無償の愛のこころって素晴らしいですね、あなたもおひとついかがですか。