すき焼きの味

 

昨日の私の家の夕飯は、すき焼きでした。

 

いつも妻が作るのですが薄味なので、今回は私好みに作りました。

妻は自分が作るすき焼きにケチをつけられたと思い、ふてくされていました。

 

私は人生の切なさをすき焼きを作ることで表現してみました。

 

妻にお鍋はできるだけ厚めで重いものを用意してもらいました。

いつまでも冷めない温かいこころのようであってほしいのです。

 

鍋が熱くなったら最初に牛脂を入れて肉が焦げないようにします。

溶けた牛脂のように透明で滑らかなこころは人間関係の信頼作り。

 

次にお肉を入れます、今回は赤身の牛肉を用意してもらいました。

 

霜降り肉だと、愛と憎しみ、善意と悪意、男と女、上司と部下のように複雑な

気持ちが混ざった、まだら模様のこころのような気がして好きではありません。

 

妻が作るすき焼きは、割り下が少なく野菜から水分が出て薄味になります。

 

妻はあまり味が濃いと体に悪いと言いますが、私は割り下をたっぷり使って

濃いめの味付けが好きです。

 

愛をたっぷり注ぎ、人情味の濃い人間のような味が大好きなのです。

 

お肉は最初に1枚だけ入れます、さっと焼いてひとりですぐに食べました。

妻はまるであなたの性格のようね、自分さえよければいい、欲のかたまりねと

言いました。

 

私は妻に、長ネギの外側は固いので1枚皮を剥くように言いました。

あなたも仕事で一皮むけて、早く出世できればいいのにと妻は言いました。

 

そして長ネギを入れますが白い部分だけではなく、できるだけ青いところも入れます。

陰のような人生だけではなく、日の目を浴びて輝かしい人生も送りたいのです。

 

そして長ネギは斜めに切ります、時には人生、斜に構えることもあります。

妻は、そんなバカなこと言わないで早く作ってよとご機嫌斜めでした。

 

ハクサイは葉の部分と芯の部分は分けてください、葉の部分は縮むので大きめに、

芯の部分は固いので火が早く通るようにそぎ切りにします。

 

人にも頭が柔軟でこころの広い人もいれば、頭が固くて頑固な人もいます。

そこをうまく調整するのが人生の名料理人です。

 

妻はどうせ私は料理下手よと言って私の頬をつねりました。

 

豆腐はよく水を切って下さい、水臭い関係にならないように。

妻はどうせ私とあなたは水臭い関係だわとそっぽを向きました。

 

しらたきは食べやすいように2、3等分になるようにカットします。

人間関係がもつれないように。

 

そして、しらたきとお肉は離してくださいね、相性の合わないもの同士が

一緒になると美味しくありません。

 

それってもしかして私たちのこと、あなた浮気していないでしょうねと妻が

言いました。

 

しいたけは頭の部分をV字に切り込みを入れ飾り切りをしましょう。

見た目がよくなり火が通りやすく味が染み込みやすくなります。

 

妻は私に、あなたは見た目は悪いし、煮え切らないし、貧乏が染みついて

いると言いました。

 

そして再度残った牛肉を入れて煮えすぎて固くならないうちに食べましょう。

妻は、あなたの今までの態度で、私のこころは煮えたぎっていると言いました。

 

おっと忘れていた、最後に春菊を入れないと、春はもうすぐ、すぐに

柔らかくなります。

 

妻は私に、あなたには春は来ない、永遠に冬のままよと言いました。

 

さあ出来上がりました、これは私の人生の味だから食べてごらんと言いました。

すると妻は苦くて、辛くて全然おいしくないと言いました。

 

私はそれはそうだろう、私の人生は決して甘いものではないと言いました。

 

あなたの人生の味ってちっとも美味しくない、妻はもう2度と私にすき焼きは

作らせないと怒りました。

 

妻よ、世間はおまえの思うほど甘くはないと私は言いました。

 

なによ、あなたはいつも気楽にブログを書いているくせにと妻は言いました。

 

トホホ、私は妻には頭が上がりません。

みなさんも今晩、すき焼きはいかがですか。