人生の賞味期限

 

私はお休みの日には妻とよくスーパーに買い物に行きます。

広い食品売り場には、数えきれないほど多くの種類の商品が並んでいます。

 

出来立てのアツアツの天ぷらから日持ちする缶詰まで、様々な商品があります。

 

食品にはそれぞれ賞味期限があり、その期限が近づくと値引きされ、

売れ残れば廃棄処分されるようです。

 

人生にも賞味期限があるような気がします。

 

アツアツの天ぷらのように、熱いこころで人生を楽しんでいる人もいれば、

 

現状に満足し、生きていることの素晴らしさを忘れ、日持ちする缶詰のように

だらだらと日々を過ごしている人もいます。

 

前者の目は生き生きと輝き、後者の目は死んだように輝きを失っています。

これは年齢には関係ありません。

 

お年寄りでも、何事にも常に興味を持ち、新しい発見をすることで感動する人は、

生き生きとしています。

 

若い人でも、苦労することを嫌い、新しいことに挑戦しないで、先行きに不安を

感じている人は辛そうです。

 

話しは変わりますが、私の会社の他の部署に、20代後半の女子社員がいました。

 

彼女は独身ですが、そろそろ、独身女性としての賞味期限が近づいていると

思っていたようです。

 

彼女は顔もスタイルも、ほかの人と比べて見劣りするようには思えませんでした。

しかし、彼女は今まで何度も恋愛をしましたが、すべて片思いに終わったようです。

 

ある日のお昼休憩の時です、たまたま、食堂で隣に座った彼女と私は世間話を

していましたが、だんだん話が恋愛の話に発展しました。

 

彼女は私に恋愛をしたことがあるかと聞きました。

突然の質問に私は驚きました、恋愛をしたのはもう何十年も前のことです。

 

私は彼女に、ずいぶん昔に恋愛はしたことはあると言いました。

すると彼女は、その時どんな気持ちだったのかと私に聞きました。

 

私は彼女のする事なす事すべてが素晴らしく見え、彼女の姿はまるで

女神のような気がして、楽しさと切なさの繰り返しだったと答えました。

 

そして愛する彼女のためなら、たとえ命をなくしても惜しくはないと

思っていたと言いました。

 

彼女は映画で見るような大恋愛を頭に描いたようで、私もそんな恋愛をして

みたいと羨ましがりました。

 

私は彼女に、どうしてあなたは男性に好かれないのかと聞きました。

 

彼女は男性の容姿ではなく、人間的に素晴らしい男性を好きになるようでした。

人の気持ちを考えて行動をする、優しいタイプが好みのようでした。

 

積極的な彼女は、好きになった男性には、徹底的に愛を示し、仕事のお手伝いも

周囲の状況を構わず、その男性を優先したようです。

 

彼女は自分の気持ちを伝えるために、がむしゃらに彼を陰から支えました。

 

時には、彼に、手作りのお菓子や手編みのマフラーを贈り、愛を伝えようと

しましたが、それでも結局、愛は伝わることはありませんでした。

 

彼女は、こんなに尽くしても愛されない私は、女性として魅力がないのでしょうか、

きっと私はこれからもひとりで寂しく生きていくのねと悲しそうに言いました。

 

私はそれを聞いて、気落ちした彼女に言いました。

あなたは彼のことばかり考え、周りの人の気持ちを疎かにしてきましたね。

 

これからは、あなたが彼に注いだ愛情を周りのすべての人に注ぎなさい。

それも見返りを求めてはいけません、無償の愛です。

 

その愛は涙を誘い、感動はこころの震えとなって相手に伝わります。

 

やさしいあなたの気持ちは、水面の波紋のように広がっていきます。

そうすればあなたは結婚を焦ることはありません。

 

そのうちきっと、あなたのやさしさを理解してくれる人が現れるでしょう。

愛と感動はあなたの人生の賞味期限を永くすることができるはずです。

 

私は愛と感動の大切さを、強く彼女に伝えました。

 

私の言ったことを素直に聞いてくれた彼女は、すべての人をやさしく愛しました。

次第に彼女は、以前とは違って、見違えるほど輝いてきました。

 

その輝きを見た彼女の理想のタイプの男性は、彼女を見逃しませんでした。

 

そしてふたりは、映画のような大恋愛にはなりませんでしたが、今では、

誰もがうらやむおしどり夫婦になっています。

 

愛と感動は、人生の賞味期限を永く保つ、捨ててはならない宝物なんですね。