愛を知らない少年

 

今回は、愛されることを知らないで、非行に走った男の子のお話です。

 

彼は共働きの両親の間に生まれました。

母親は専業主婦のように、時間をたっぷりかけて彼を養育できませんでした。

 

父親の給料は少なく、母親が働いてなんとか人並みに生活することができました。

 

両親はできるだけ早く彼を幼稚園か保育園に入れたいと思い、探しました。

 

近くの保育園では、0歳児から預かってくれるし、早朝から夕方まで預かってくれ、

給食までありました。

 

両親はそこの保育園に決め、彼は待機することもなく、0歳で保育園に入ることが

できたようです。

 

母親はあまり子供が好きではなく、ドライな人間でした。

彼女はフルタイムで働き、子供のことは保育園にまかせっきりでした。

 

本当なら、保育園と連携を取り、発達に応じた食べ物を与えたり、興味を持った

遊びをさせたりしながら、子供とのコミュニケーションをとらなければなりません。

 

大切なことは、身近な大人との絆が深まることで安心感をもって甘えることが

できるようになることです。

 

そうすることで親子との信頼感が生まれ、周囲のものに興味を持ち、

大人から離れての活動に挑戦し成長していきます。

 

しかし彼は、両親からの愛情をほとんど受けることなく身体だけは成長しました。

物心が付いたころ、彼の家庭は普通の家庭ではないことに気づきました。

 

彼が小学校に入った頃、いつも両親がケンカをして、腹いせに彼は父親から

暴力を振るわれました。

 

彼のこころは歪み、他の人とうまく関われなくなり、学校ではイジメられる

ようになりました。

 

学校が嫌いになっても家庭が逃げ場にはなりませんでした。

家にいると、両親からの理不尽な教育で、発散できないストレスが蓄積しました。

 

彼はこんな家庭に生まれた運命を嘆きました。

選べるならどんなに貧しくても、愛のある家庭に生まれたかったと思いました。

 

彼は、自分なんかどうなってもいい、自分をこころから愛している人なんか

どこにもいないと思うようになりました。

 

中学生になると、だんだん彼は不良グループと付き合うようになりました。

同じような境遇で育った人たちとは、両親とよりもこころが通じました。

 

彼は生まれて初めて、自分の気持ちを理解してくれる仲間だと思いました。

 

しかし仲間といっても、人を憎み、仕返しをしたいという思いの共有と

寂しさを紛らわせてくれるだけでした。

 

彼はこの仲間たちは、愛を持って結ばれた仲間とは思いませんでした。

辛い思いは共有できても、人を愛する気持ちは持ち合わせていなかったようです。

 

人を愛するという気持ちを理解できないことは悲しいことです。

 

不良グループは、人を暴力的にあるいは心理的に支配することで、無関心に

扱われた自分の存在を認めさせようとしました。

 

彼らは、人たちが自分たちの存在を恐れ、屈服することに快感を覚えました。

でもそれは一時のことで、彼のこころは満たされませんでした。

 

彼は本当は愛に飢えていたのでしたが、みんなは彼に無関心を装いました。

みんな彼とは関わりたくなかったのです。

 

彼は中学生としては体格がよく、身長が180センチ近くあり、がっちりタイプで

目つきが悪く、他の生徒は彼を怖がっていました。

 

ある時、彼は、中学校で彼の気に入らない先生の授業に、もうやめろと指図しました。

しかし、その先生は他の生徒の手前、やめることはなく授業を続けました。

 

すると彼は先生に近づき、いきなり先生の頬を殴り、先生は口を切ったのか

血が出ていました。

 

父親がいつも彼に対して暴力を振ったのと同じでした。

彼はそのように教育されてきたのです。

 

そしてその授業は、中断したまま終わりました。

彼は次の日から学校に来なくなり、少年院に収容されました。

 

彼は生まれた時はほかの子と同じように純真なこころを持っていたのですが、

愛のない家庭で育ったため、このような凶暴な性格になってしまいました。

 

その後社会人となった彼ですが、噂によると、気に入らない上司には

今でも暴力を振って首になり、転々と職場を変えているようです。

 

あなたにとって両親はどんな存在でしょうか、誰よりもあなたを愛している

はずです、そうでなければ、絶対子供を産んではいけないのです。

 

日本では少子化が問題になっていますが、子供のこころを大切にしないで

子供の数をただ増やすだけでは不幸が増えるような気がします