お別れの花言葉

 

私がまだ若かった頃の私の友人お話です。

 

私の友人はある会社の営業マンとして働いていました。

成績は優秀でイケメンであり、女の子によくもてるタイプの好青年でした。

 

春の人事異動で、いい成績だった彼は、今より大きな営業所に転勤となりました。

そこには今まで以上に多くの従業員が働いていました。

 

新しい環境になれるまでばたばたして落ち着きませんでしたが、2週間くらいが

過ぎるとだんだん慣れてきました。

 

その間に、そこには運命的な出会いを感じるほどのすてきな女性がいるのに

気がつきました、彼は一目惚れでした。

 

彼女はその営業所の事務の社員で彼より2歳年上でした。

彼女の営業員に対する気配りはとても素晴らしく優しい女性でした。

 

彼は彼女のことが気になり、先輩の男性社員に彼女のことについて聞いてみました。

彼女は1年前に結婚しその後も続けてここに勤務しているということでした。

 

実は、その先輩は、彼女が結婚を前提に付き合っている男性がいることを知らないで

彼女を好きになって、そのことを知ってとてもショックだったと言いました。

 

彼女が結婚してからは、先輩は、彼女の話題にはすべて耳を傾けないように

したそうです。

 

彼はこんなに素晴らしい女性が結婚しているのがとても残念に思いました。

 

彼は前の営業所にいた女の子と付き合っていましたが、ここにいる彼女の気配りと

優しさは比較にならないほど素晴らしく思いました。

 

1年くらい経った頃、彼は昼食はほとんど外で食べていましたが、ある時、彼女が

いつも外食では栄養のバランスがよくないでしょうと手作りのお弁当を持ってきて

くれました。

 

彼は彼女のご主人に申し訳ないと思いながら食べましたが、こころのこもった

お弁当は外で食べるどんな豪華な料理よりも温かくておいしく感じました。

 

彼は、年上の彼女を自分の母親のような気持ちで接するようになりました。

 

彼も営業で外回りをしているとき見つけたケーキ屋さんでおいしいケーキを

買ってきて彼女におやつに食べてもらいました。

 

だんだんふたりの仲は親密になってきましたが彼女は人の妻です。

 

一定の距離を置きながらも彼は、自分のこころがだんだん変化しているのを

感じました。

 

甘え心がいつのまにか恋心に変わっているのがわかりました。

 

彼は自分の気持ちのコントロールができなくなり私に相談に来ました。

 

彼のその時の気持ちをじっくり聞いた私は、君がいくら彼女が好きでも

彼女を愛せば不倫になる、そうすればみんなが不幸になる、出会いが遅かった

運命を恨みなさいと言いました。

 

その後、彼は私の助言に従って、優しい彼女の気持ちをだんだん遮るように

努めました。

 

とても辛い日が続きましたが、幸か不幸か、他の営業所の欠員があり、そのため

彼は転勤となりました。

 

彼は苦しいこころから解放されると思いました

 

最後のお別れに彼女は目に涙を浮かべ、これは私のあなたへの気持ちですと言って

きれいに束ねたマーガレットとハナミズキの花束を彼に渡しました。

 

その花言葉は「真実の愛」と「私の想いを受けてください」でした。

 

その花束に、彼に対する彼女の熱い気持ちが込められていました。

 

そんな花言葉の意味も知らないで、他の営業所に異動した彼は1年後、

今まで付き合っていた彼女と結婚しました。

 

その直後、元いた営業所の先輩から電話があり、結婚するということでした。

その相手はなんと彼を悩ました前の営業所で花束をくれた彼女だとわかりました。

 

少し解説をすると、元営業所にいた先輩は、結婚した彼女のことを忘れるために

一切、彼女に関する話題は避けていました。

 

彼が彼女のことを先輩に聞いたときには、彼女は夫と離婚し、独身に戻っているのを

先輩は知りませんでした。

 

その後、彼女はだんだん彼のことが好きになりました。

しかし、彼女は自分の戸籍に傷があるのを気にして彼に結婚を申し込むのに

躊躇していました。

 

そして、彼が私に相談してから急に疎遠になったことで彼女は自分が再婚と

なることに引け目を感じ、彼のことを諦めました。

 

そして彼が転勤でいなくなった後、離婚していることを知った先輩は彼女と

仲がよくなり、結婚まで進んだようです。

 

彼が私に相談をしに来た時、不倫でもいいから自分の気持ちを貫きなさいと

言っていれば彼の運命は大きく変わっていたことでしょう。

 

私はその後、これに懲りて恋愛相談は一切受けないようにしています。