クマの親子の会話

 

私はツキノワグマの母です、息子と一緒に食べ物を求めて人里まで降りて

来ました。

 

私たちは、冬眠を前にして、ブナやどんぐりの実などの植物を主に食べますが

山が荒廃すると人里近くに降りてきます。

 

私たちは本当は臆病な性格で、人間の気配を感じれば逃げていくのが普通なんです。

 

ところが、視界の悪いところでばったり出会ってしまったり、大切な子供を

守ろうとして、人間に危害を与えることもあります。

 

食べ物の匂いに敏感で、食べ残しの匂いを嗅ぎつけて近寄ってくることもあります。

 

これから親子グマの会話が始まります。

 

西の空に沈みつつある夕陽を見ながら、母グマは子グマに言いました。

「もう少し我慢してね、日が暮れて夜になったらごちそうが食べられるから。」

 

子グマは言いました。

「人間ってひどいんだね、僕たちの住んでいるところを荒らしたせいで

僕たちはこんなところまで降りてこなければならないんだね。」

 

母グマ「でも人間の世界って素晴らしいのよ、食品工場やお店やお家のゴミ箱を

見てごらん、まだ食べられるものがたくさん捨ててあるから。」

 

子グマ「きっと僕たちのために、捨てているんだね。」

 

母グマ「私たちが食べていけるのは人間のお陰よ。お礼にテディベアと

くまモンのぬいぐるみをあげようかしら。」

 

 

子グマ「このところ、温室効果ガスの増加によって、地球の温度が高くなって

いると聞いたけど、大丈夫かな。」

 

母グマ「私たちは寒くなると周りに食べ物が少なくなるので、冬の間は冬眠して

いたけど、温暖化のおかげで、1年中眠らないで楽しく暮らせるかもしれないわ。」

 

子グマ「冬が暖かくなれば、バナナやパイナップルのような南国で作られる

おいしいフルーツも食べられるかもしれないね。」

 

母グマ「そうだね、私たちは人間のおかげで美味しいものが食べられるように

なるかもしれないわ。」

 

 

子グマ「人間の世界にはスマホという便利なものがあって、それがあれば何でも

できるそうだね。」

 

母グマ「そうなのよ、それは世界中の情報が瞬時に集められる便利なもので

知りたいことは何でも教えてくれるの。」

 

子グマ「それで人はみんな、いつでも、どこでも、スマホを見ているんだね。」

 

母グマ「だけど残念ながら、スマホは自分自身のことは教えてはくれないのよ。

だから人間は自分を見失って悩んでいるの。」

 

 

子グマ「人間の世界にはお金というものがあって、お金持ちのところにばかり

お金が集まり、貧しい人はいつまでも貧しいと聞いたけど。」

 

母グマ「私たちのように食べるだけで精いっぱいのクマでも、貧しい人との

共感が生まれ、人間と仲良くなれるような気がするわ。」

 

子グマ「でも、お金って何でも買えるし、ほしくないの?」

 

母グマ「人間の世界って、お金があるからその奪い合いで、不幸せになるような

気がするわ。私は、人間世界では、お金ではなく、愛の方が大切だと思うの。

 

クマの世界にはお金がないからあなたに大きな愛を注げるのよ。

 

だから私は、あなたに危害を与える外敵に対しては、臆病さを忘れて

命がけで戦うのよ。」

 

 

子グマ「人間には欲というものがあって、僕にはよく理解できない。」

 

母グマ「あなたがお腹がすいた時、何か食べたいと思うのが欲よ。」

 

子グマ「人間は食べるものが十分あるから、もう、欲なんてないんじゃないの。」

 

母グマ「人間の欲望には食欲、財欲、色欲、名誉欲、睡眠欲などたくさんあり、

 

その欲望にはキリがないのよ。人間は海も空も陸もすべて自分たちのものに

しようとしているようなの。」

 

子グマ「だからこの地球の環境がだんだん悪くなってきたんだね。」

 

母グマ「だから神様は天罰として、地震や台風、集中豪雨などで反省を促して

いるのに、まったく反省しない。だから今回、コロナで大きな罰を与えたのよ。」

 

子グマ「ワクチンを打っても打っても、コロナは収まらないようだけど、人間も

僕たちのように冬の間、一人残らず同時に冬眠すれば、コロナは収束するのにね。」

 

母グマ「ダメよ、人間が反省するまでは、ずっとコロナは収束してはいけないのよ。

そうでないとこの地球は破滅してしまうかもしれないわ。」

 

どうやらこのクマの親子、もしかすると、人間よりも賢いのかも知れません