こころの運転

 

先日、私の友人がドライブに行こうと私を誘いました。

 

彼は新車を買ったばかりで、その乗りごごちの良さを私にも知ってほしいようでした。

それから彼は、彼の仕事が休みの日の朝、私を迎えに私の家に来ました。

 

私はクルマのことはあまり詳しくはないのですが、高級車なのが一目でわかりました。

私はいつも軽自動車で通勤しているので、乗せてもらえるのが楽しみでした。

 

ゆったりした車内空間は、軽自動車とはまったく別世界でした。

静かなエンジン音に滑らかな走り、私を包み込んでくれるソファーのようなシート。

 

私はそのとき、お金で買える幸せって、こんなことを言うのかと錯覚しそうでした。

私は彼が運転するクルマに乗るのは、そのときが初めてでした。

 

彼は私より10歳ほど年下で独身です。

家族がいないので私を誘ってくれたようです。

 

彼は、コンピュータ関係の仕事をしていてたくさん給料をもらっている

クルマが趣味の、気の弱いまじめな人間です。

 

彼はとてもおとなしく、上司に逆らうこともなく、無理なことを言われても

黙って仕事をやり遂げるタイプです。

 

普段は仕事が忙しくて時間に追われ、いつもイライラしていましたが、

仕事の休みの日のドライブが、彼にとって最高の楽しみのようでした。

 

しばらくは、彼の運転するクルマで私はルンルン気分でしたが、次第に、

彼の運転が気になってきました。

 

前を走る軽自動車がゆっくり走るので、ぴったりと後ろに接近し、「バカヤロー

のろのろ走るな」と思わぬ発言をしました。

 

いつもの彼ならこんなことは言いません。

 

見通しのいい真っすぐの道だったので、反対車線に飛び出し、そのクルマを

一気に追い抜きました。

 

私はもっとゆっくり走ってもいいんだよと言いました。

その後、交差点で右折のために信号待ちをしていました。

 

信号が黄色になり、赤に変わったとき、直進の対向車がスピードを出していたせいか、停止するタイミングを逸し、そのまま交差点に入って通り抜けようとしました。

 

そのとき彼は、そのクルマに向かってほんの少しだけ対向車に向かって前進しました。

 

その瞬間、衝突するかも知れないと思った対向車のドライバーの慌てた表情が

見えました。

 

私はどうしたのかと聞くと、彼は「信号無視をすると危ないから気をつけなさいと

相手に警告の意味でそうしたんだ」と、にやっと笑って言いました。

 

私は彼の行動に驚きました、いつもとは別人のようでした。

 

私は彼に、いつもの君と違ってどうしてそんな運転をするのかと聞くと、

外の世界とクルマの中は、運転中、別次元に感じると言いました。

 

私が現実の世界から逃避して、ブログの中で思いきりこころの中を

暴露しているのと同じように感じました。

 

彼は私に、このクルマに乗っていると優越感があり、気持ちが大きくなり

強い人間になったような気になると言いました。

 

それを聞いて、私が1年近くブログを書き続けられるのは、読者のみなさまのお陰

なのに、それを忘れてしまう私の愚かさを反省しなければならないと思いました。

 

また、彼は言いました、自分の仕事はいつもストレスを感じるので

 

つい、クルマの運転をするときは、それを解消しようと思い、運転が荒く

なると言いました。

 

私も現実の世界で辛いことや苦しいと思うとき、その気持ちがブログの中に

表れることがあるので気をつけなければと思いました。

 

また彼は、クルマで走っていると外からは彼が誰だかわかりにくいので

 

クルマの運転をしていると、自分の本当の性格が出てしまうのかも

知れないと言いました。

 

私もブログを書くとき、私が誰なのか正体がわからないので、つい、本性が

出てしまう恥ずかしさを感じました。

 

そんな彼ですが、右折左折のとき、横断歩道を渡っている歩行者にはとても

優しいのです。

 

歩行者から離れて停止し、完全に渡りきるまで待って、ゆっくり横切りました。

私は安心しました、彼は本当はやさしい人間だったのです。

 

私がブログを書くときは、こころの運転をし、自分勝手ではなく、読者のみなさまに

やさしく、楽しく読んでもらわなければならないと思いました。

 

人のふりを見て我がふりを直せとはこんなことを言うのですね。

 

人生、勉強することはまだまだたくさんありますね。

 

私はみなさまのブログをたくさん読んで、今年も勉強させていただきたいと

思いますのでよろしくお願いします。