愛の自動運転

 

先日のお昼休みに、私が食事をしていると、後輩が私のそばに座って、

大きくため息をつきました。

 

私がどうしたのかと聞くと、彼は、二日間かけて徹夜で作った企画書を

課長に見せたら、こんな企画書新人でも書ける、ポイントがずれているから

 

やり直せと言われたようです。

 

また一からやり直しかと思うと、自分の仕事に自信がなくなったようです。

ご飯を食べながら、彼は私に、何か悩みはありますかと聞いてきました。

 

私は仕事の上ではそれなりの悩みはありますが、それより、クルマの運転が

あまりうまくはないので、それが悩みだと言いました。

 

どこも広くてまっすぐな道ばかりならいいのですが、そうではありません。

狭い駐車場の出し入れ、混んだ道の進路変更、細く曲がった道のバック。

 

急な上り坂の発進、急な下り坂の雪道走行、霧で視界の悪い高速道路。

私はいつも緊張しながら運転をしていると言いました。

 

周りを見ると、若い人もお年寄りもスイスイ運転をしているように見えるけど

私はどうもクルマの運転が苦手だと言いました。

 

私がそんなことを話すと、彼は心配はいらない、そのうち自動運転の

時代が来るから大丈夫と言いました。

 

目的地を設定すれば、道路の状況をクルマが自動的に判断して、安全にかつ、

スムーズに運転してくれるようになると言いました。

 

私はそれを聞いて便利になると思う反面、自分でクルマをコントロールする運転の

楽しさもなくなると思いました。

 

彼はそんな悩みならいいですねと、私を小ばかにしたように言いました。

 

彼は自分の将来に不安を持ち、いつまで会社にいられるかわからないし、

どんな仕事をすれば上司に褒められるのかわからないと言いました。

 

人間関係もうまくいかず、精神的につらく、こころの病にかかりそうだし、

これからの人生、先行きが見えなく、とても不安だと言いました。

 

彼は、本気なのか冗談なのか、AI(人工知能)による、人生の自動運転の時代が

来ればいいのにと言いました。

 

自動運転で人生の目的地を決めれば、自動的に道案内をしてくれて、それに従って

行動すれば、他の人との摩擦もなく、すんなりそこに到着できる。

 

お金の心配もなく、こころの悩みもなくなり苦労のない人生が送れる。

彼は早くこんな時代がくればいいなと言いました。

 

私は誰がそんな道案内をしてくれるのかと聞きました。

彼はみんなが持っているスマホだと言いました。

 

朝起きれば、一日のスケジュールがスマホに送信されている。

それも世界中の情報をAIが集め、今日の最適な行動を助言してくれる。

 

それに従って行動すれば なんの迷いもなく心配もない。

 

なんなら、人生の目的もスマホに決めてもらってもいい。

自分が何をしたらいいのか悩んでいる人もいるから。

 

私は彼の人間味のない考え方に、ぞっとしました。

AIに頼らなければならないほど、相当人生に疲れているのだろうと思いました。

 

私は世の中がだんだん便利になっても、それが幸せなのかと思います。

便利さを求めることで、愛がどこかへ消えてしまうような気がします。

 

私は彼に、私の考え方を言いました。

 

世の中のすべてが愛によって自動的に運転される幸せな世界。

愛は多いところから少ないところへと自動的に移動する。

 

貧しい人は大きな愛を持って、豊かな人の貧しいこころを救う。

豊かな人は愛と交換に、貧しい人に富を与える。

 

すべての人が平等に愛と富を分けあう世界。

人のこころが愛と感動の共感で輝き、幸せをみんなで分けあう世界。

 

愛の自動運転ではどうかと言いました。

 

それを聞いて彼は、私のことを理解してくれたようです。

AIにはこんな人間味のある発想はできないということを気付いたようです。

 

これからの未来はAIに頼るのではなく、愛こそが私たちに幸せをもたらす

ではないかと思います