愛の欠乏症

 

私の会社の同僚で、いつもいつも上司から叱られている人がいました。

 

その人は私より5年後輩の男子社員です。

私はいつも叱られている彼を見て、かわいそうになりよく慰めていました。

 

私の場合、上司が私の能力のなさをよく知っていたので、あまり期待されて

いませんでした。

 

なので私は彼ほど叱られることはありませんでした。

 

彼の場合はまだ期待されていたようで叱られていましたが、かなりストレスを

感じていたようです。

 

彼は仕事以外に家庭や世間でもストレスを感じることがよくあるようでした 。

 

私はのんびり屋であまり物事にはこだわらない性格です。

 

彼は、短気で感情的になりやすく、思うように物事が進まないとイライラする

神経質なタイプでした。

 

性格が正反対なふたりでしたが、私が彼の気持ちを理解してやさしく対応して

いたので、いつも彼は私を慕ってくれて、彼はとても仲の良いかわいい後輩でした。

 

しかし彼をまったく理解しない人に対しては、彼はとても強い態度で口撃しました。

 

ある日の夕方、彼はスーパーでふたりの子供のために同じお弁当を2個買いました。

 

家に帰って子供が食べようとしたところ、1個のお弁当にだけ、半分に切った

ゆで卵が入っていませんでした。

 

早速彼はスーパーに、1個のお弁当にゆで卵が入ってなかったので、これから

10分以内に家までゆで卵を持ってきてくれと怒って電話しました。

 

彼はふたりの子供が一緒にお弁当を食べるために待つのは、10分くらいが限度だと

思ったからでした。

 

でも、クルマで急いでもスーパーから家までは10分くらいはかかる距離でした。

 

スーパーの担当者は慌てて材料を探して急いで持ってきましたが、結局20分以上

かけてゆで卵を持ってきました。

 

彼はどうして10分以内に持ってこなかったのかと、子供がお弁当を食べ終わるまで

延々とスーパーの担当者に苦情を言い続けました。

 

それでなくても夕方の忙しいスーパーの担当者は、彼の理不尽な要求と苦情に

時間を取られ悲痛な思いで耐えました。

 

彼はスーパーの担当者に恨みでもあったのでしょうか。

スーパーの担当者は、彼のストレスの発散のための犠牲になったのかもしれませんね。

 

別の日のことですが、彼が家電量販店行ったとき、買いたいと思った商品が

品切れでした。

 

彼は販売員を呼び、すぐほしい、この商品はいつ入荷するのかと聞きました。

しかし、その販売員は入荷予定日がはっきりわかりませんでした。

 

販売員は彼が急いでいるようなので、親切に、在庫のある同じタイプの別の商品を

勧めました。

 

彼は販売員が気が弱そうだったので、この商品が欲しいと言っているのにほかの

商品を勧めるとはどういうことか、誰がそんな教育をしたのかと怒り始めました。

 

困った販売員は店長を呼んできますと言って店長が対応すると、彼は別人のように

おとなしくなりました。

 

彼は立場の弱い人には強いのかもしれませんね。

 

また、お昼に彼がお店にご飯を食べに行った時のことです。

ちょうどみんなの食事どきでお店は混んでいました。

 

彼は注文したランチがなかなか来ないので店員に、もう10分以上も待っているのに

まだか、早くしてくれと言いました。

 

その店員は、ごめんなさい、今は一番忙しい時間帯なんです、みなさん待って

いらっしゃいますと言いました。

 

彼はその店員の対応した言葉が許せなくて頭に血が上りました。

彼は、激怒して、客を待たせるのが当たり前なのか店長を呼べと言いました。

 

その店員は彼の剣幕に驚き、慌てて店長を呼びに行きました。

そして多くのお客の前で、店長は何度も何度も彼に頭を下げました。

 

店長は大勢の前で恥をかき、周りのお客は楽しいはずのランチタイムが

台無しになりました。

 

彼はこのお店に恨みでもあったのでしょうか。

 

実は、彼は会社だけではなく奥さんからもダメ人間と評価されていたようです。

 

なので彼は、お客の注目を集めることで自分の存在感を示したかったのかも

しれませんね。

 

このように彼はストレスのせいで自分の感情をコントロールできなくなったようです。

彼は自分のストレス発散のために周りに苦情を寄せるのでしょう。

 

もしかしたら世間の人は、彼のことをクレーマーと呼ぶかもしれませんね。

クレーマーの存在で悩んでいる人たちはたくさんいると聞きます。

 

でも私が思うには、私が彼のことを理解してあげることでとても仲がいいのは、

彼は愛に飢えているのではないかと思います。

 

私は彼のことをクレーマーと呼ぶのではなく、愛の欠乏症と呼びたいと思います。

愛があれば、私にだけではなく、彼は誰にでもやさしくなれると思います。

 

最近クレーマーが増えているのは、世の中に愛が不足しているような気がします。

 

私はこの地球が、みんなで助け合う、愛で溢れる世の中になることを

こころから願います。