面接官と無責任な私

 

みなさん、面接と聞いてどんなふうに思いますか。

 

入学試験や入社試験などで面接を受けることがありますね。

私は面接と聞くと緊張します。

 

面接官はどんな人でどんなことを聞いてくるのだろうかと思うと

面接直前は胸がドキドキします。

 

そんな私ですが、私の友人で印刷会社の人事部で働いている人がいました。

数年前にその彼に会ったときのお話です。

 

私は彼が、面接官として何人もの人と面接をしているのを知っていたので、

どんな仕事なのかとても興味がありました。

 

彼の話によると、彼にとって、仕事の中で難しいのが中途採用のための

面接のようでした。

 

前職が同じ業界ではなく、様々な業界で働いていた人たちが応募してくるので、

その人の能力や性格を見極めることはなかなか大変だったそうです。

 

中には彼より年上で、彼の会社より大企業で重要な職に就いていた人も

面接に来たようです。

 

彼が面接で求職者に質問することは

 

・前職の退職理由と、この会社の応募理由

・今までの職務経歴

・前職でもっとも大切だと思っていたこと

・自分の長所と短所

 

など、その求職者と話をしながらその人物像をイメージしていたようです。

 

面接官は、できるだけ主観を排除して定められた評価基準に沿って、客観的に

評価しなければならないようでした。

 

求職者は生活がかかっているわけですから、採用されるためには積極的に

自分のいいところを売り込んできます。

 

求職者は面接の前に、いろいろと準備をし、面接官の質問を想定し、あらかじめ

立派な回答を用意しているわけです。

 

彼はそれを頭に入れて質問をしました。

あまりにも立派な回答が続けば、わざと想定外の質問もしたようです。

 

逆に、求職者から面接官に対して鋭い質問をすることもあったようです。

 

そうして選ばれた人物は、彼の会社で働くことになりますが、

中には、面接してせっかく採用が決定しても辞退する人もいるようでした。

 

彼が会社の魅力を求職者に伝えきれなかったのか、彼の面接の仕方が不満

だったのかもしれません。

 

入社後、働きぶりを見ると、彼が期待したような人ばかりではなかったようです。

 

選ばれる求職者も大変ですが選ぶ側の面接官も大変苦労があるようです。

 

彼は私に、お前だったらどんなふうに面接をするかと聞いてきました。

 

しかし、私は人事部の仕事は知らないし、採用面接などしたことはありません。

私は相談されても何もできないと言いました。

 

すると彼は、人の価値を判断するのはどうしたらいいのかだけでも考えて

ほしいと言いました。

 

私は考えた挙句、君の会社のお客を大切にしようという想いが

その人の中にどれだけあるのか、それで判断してみてはと言いました。

 

そのためには多くの人を愛し、人のために尽くすことができるような人物を

見つけるのが君の仕事ではないかと言いました。

 

私は調子に乗って、まるで彼の会社の社長になったような気持ちで続けました。

 

やはり企業というものは顧客中心主義でなければ、市場競争の中で淘汰される

運命にあるだろうと言いました。

 

ところが人間の欲望はエンドレスでそれを満たそうとする顧客中心主義は

果てがありません。

 

その弊害が、現在の気候変動問題や格差拡大といった社会問題になっています。

 

私は彼に、採用された人にはSDGsの教育をすることによって会社が

より社会に貢献できるようになるべきだと言いました。

 

これからは社会貢献できる企業しか生き延びることはできないだろうと言いました。

そして、一人ひとりの小さな行動が地球を救うことになると言いました。

 

彼は私の話を聞いて、それは理想論だ、現実はそんなにはうまくいかないと

言いました。

 

それはそうでしょう、面接を受けるだけでドキドキするような小心者の私が、

他人事だと思って無責任なことを言うのですから。

 

だったら最初から私に聞かなければいいのにと思いました。

 

それから数か月後、彼は人事部から営業に回されてしまいました。

 

もし彼が、私の意見を聞いて、SDGsへの道を一歩でも進んでくれたら

うれしかったのですが、それができなくて残念に思います。