不器用な恋

 

私の部署には32歳で独身の女子社員がいます。

彼女はとても若ぶりで20代半ばだと言っても通用しそうです。

 

気立てもよく美人なのに何故今まで独身なのかが今回のお話です。

 

今からさかのぼること3年前のことです。

 

私の部署にいる彼女は友達の面倒見がいいので名前を友見とします。

その友達は人に頼って果実を自分のものにしようとするので名前を頼実とします。

 

両者の恋愛関係となる男性を友頼とします。

 

その当時友見は29歳、頼美は3歳年下の26歳、友頼は1歳年下の28歳でした。

 

友見と頼実は、以前同じ部署で5年一緒に働いていてとても仲が良かったのです。

仕事の休みの日にはよくふたりでショッピングをしたり食事をする親友でした。

 

血を分けた姉妹よりもお互いを信頼し、なんでも隠し事なく話す間柄でした。

 

しかし、その半年前に頼実は配置転換となり、別の部署に変わりました。

それでもふたりは仲が良く、今までのように仕事帰りや休みの日は一緒に遊びました。

 

その頃、友見のいる部署に若い独身の友頼が転勤でやってきました。

 

友見は彼を見て一目惚れして、とてもすてきな人だと感じました。

友見はこの運命的な出会いにこころが躍りました。

 

そんな頃、頼実が話があるから仕事帰りに一緒に食事をしようと誘ってきました。

 

友見は何の話だろうと思いながらレストランで食事をしながら聞くと、頼美は

友頼が友見の部署に入った時から気になっていて、彼を紹介してくれと言うのでした。

 

頼美は友頼のことを思うと仕事が手につかないほどこころが燃え上がったようです。

 

友見と頼実は親友であり、友頼も頼実も年下であり、大好きなふたりが幸せに

なるのなら泣く泣く自分が諦めるしかないと思いました。

 

そして友見は、友頼と頼実がうまく結ばれるようにお互いの間に入っていろいろと

仲を取り持つことにしました。

 

いくら大好きな頼美のためだといっても、友見のこころは悲しくてつらくて

やりきれませんでした。

 

友見は、頼友に対する自分の気持ちを紛らすためには中途半端にはできませんでした。

友見は親友の恋が実るために、こころをこめて彼に接しました。

 

友見の努力の甲斐もあってだんだん友頼も頼実に関心を持つようになりました。

 

その時はもうすでに彼が転勤してきて半年が過ぎていました。

 

友見は両者の都合のいい日を決めてデートのセッティングをしようと

友頼に声をかけました。

 

ところが意に反して、友頼は友見と話がしたいと言うのでその日の仕事帰りに

レストランに行ってふたりで食事をしました。

 

友見は、彼が頼美のことをもっと知りたいので、自分を食事に誘ったのだと思いました。

 

しかし、まったく違っていました。

 

友頼は、今まで熱心に頼美のことを勧めてきた献身的な友見の姿にこころを打たれ、

友見こそ自分が愛すべき人だと言いました。

 

そして、友頼は友見と付き合いたいと言いました。

 

友見は思ってもいない展開に驚き、その場では返事はできませんでした。

 

それから友見のこころの中は頼美の幸せと自分の幸せが

まるでシーソーのように交互に上下するのを繰り返しました。

 

友見が自分の 幸せを選べば、頼美を裏切ることになります。

両方を持ち上げることはできません。友見は悩んで苦しみました。

 

一週間後、再び彼は友見を誘い、友見の気持ちを確かめようとしました。

友見は自分の気持ちを彼に伝えるために誘いに応じました。

 

そこで彼女は言いました、「ごめんなさい、私には今付き合っている人がいます、

とてもあなたの気持ちは受け入れられません」。

 

こころにもない嘘を言って彼女はそこから立ち去りました。

 

それから色々ありましたが、友頼と頼実は交際することとなり、1年後には

結婚しました。

 

頼美は友見の涙の決断を知らないで大きな幸せをつかみました。

結婚式に招待された友見の心境を思うと涙が出そうです。

 

友見の恋の選択は果たして正解だったのでしょうか。

 

このことを私に話してくれた、今でも独身の友見に、いつも言っています。

 

あの時君は、なんと不器用な恋をしたなと。