飲み頃のワイン

 

私は読書が趣味なのでいつも図書館で本を借りて読んでいます。

毎週通って2、3冊本を借りています。

 

図書館にはその中で本を読んでいる人もたくさんいます。

平日は70歳くらいに見えるお年寄りの方が多いように見えます。

 

よく見ると本を読んでいるのではなく眺めているような人が多い気がします。

あるとき図書館の帰りに、たまたま、いつも本を読んでいるお年寄りの方と

お話しする機会がありました。

 

彼が言うには、

自分は家族を養うために命懸けで働いてきた。

朝早くから夜遅くまでくたくたになるまで働き、家に帰るのはただ眠るだけ

の生活だった。

 

土日の休みもどちらかは仕事で会社に行きもう一日は疲れてずっと家で寝ていた。

本当はもっと家族との時間を取り、楽しい時間を過ごしたかった。

 

そんな私も定年退職、趣味もないので家でゴロゴロ、会社にいた時のように妻に

いろいろ指図、亭主元気で留守がいいを満喫していた妻はとても嫌がり、私に

家にずっといないで外に出かけろと言う。

 

行く当てもない私は午前中は図書館で時間を潰し、お昼は家に帰ってご飯を食べ、

午後からは天気がいい日は公園に行ったり、近所をウォーキングして時間を潰す。

 

公園のベンチに腰を下ろし、行き交う人を眺めていると、みんな何か目的をもって

急いで歩いているように見える。

 

羨ましい、私は何もすることがない、たとえあっても今日ではなく、

明日でも明後日でもいい。病院に行くことだけが決まった仕事。

 

元居た会社に顔を出すも、最初は丁寧に対応してくれたが何度も行くと邪魔者扱い

される。忙しいからもう来ないでと顔に書いてある。

 

町内会の集まりで現役時代のように建設的な意見を言い偉そうにすると場の雰囲気を

壊し顔を背けられる。

 

心身ともにまだまだ元気なのに自分の居場所がなくとても寂しいと言う。

若い人にはわからないだろうこのやるせない心の寂しを。

 

こんな人、周りにたくさんいると思いませんか?

 

日本の社会、少子高齢化で年金や医療費が増大し財政がひっ迫すると言われています。

お年寄りが長生きするとこれからどうなるのでしょうか?

 

お年寄りの価値って何でしょう。

 

生まれたての赤ん坊もやがて大人になり最後にはお年寄りになります。

それまでに人生の荒波を乗り越え、心はとても豊かになります。

私が思うに、お年寄りの心は熟成された今が飲み頃の高級ワインと同じで味わい深い。

 

今の時代、スマホで検索すれば知らないことは何でも教えてくれます。

でも、スマホは人の心の中に潜む深い気持ちは決して教えてはくれません。

 

お年寄りは生きた心の百科事典。

自分で学んだ経験からその意味を教えてくれます。

時代が変わっても、生活が変わっても、人生には愛が大切だと言うことを。

 

今の世の中、お年寄りという宝物がたくさんあるのに気付かれないのが残念です。

 

若い人が同じ世代の人に心の悩みを聞いても解決しないとき、きっとその宝物は

輝きを増し、誠意をもってあなたに愛を注ぐでしょう。

 

お年寄りが毎日暗い顔をして暮らしているのを若い人が見たらどう思うでしょうか?

自分の将来と考えると寂しい気持ちになるでしょう。

 

ところが元気で生き生きしている姿を見れば、あんなステキなお年寄りなら

私もなりたいと思うでしょう。

 

 宝の持ち腐れはとても悲しいことです、見つけてくださいその輝きを。

 

 もっともっとお年寄りの価値に気が付いてあげたいと思うのは私だけでしょうか。