目から出る汗

 

昨日の日曜日、町内会の清掃がありました。

朝8時から10時までの2時間でした。

 

実を言うと、いままで私はいつも町内会の行事は妻にお願いしていました。

ところが今年、私に町内会の班長の順番が回ってきました。

 

コロナの影響で今年初めての町内会の清掃でした。

私は8時前になると緊張しました。

 

5分前に家を出ると右隣の家のご主人が、おはようございます今日は清掃の日

ですねと、私に聞くので、そうですよと言って一緒に集合場所に行きました。

 

普段は挨拶しかしたことはなかったのですが、今日は寒いですねと声をかけると

最近、朝は寒いですねと返事がありました。

 

8時になると数十人が集まり、町内会長が清掃の説明をした後、1~4班に分かれ、

班長が参加者の確認し、参加者にはジュース代200円を配りました。

 

そして、具体的に清掃の場所などを説明し、ゴミ袋を配りました。

 

まずは各自、自分の家の周りの清掃です。

 

私が家の前の道路の落ち葉を掃いていたところ、左隣の家の奥さんも近くで

落ち葉を掃いていました。

 

私は、今の時期、落ち葉がたくさんあって大変ですねと言うと、彼女は

掃いても掃いてもすぐ落ちてくるから大変ですと言いました。

 

右の家のご主人も左の家の奥さんもそれ以上深い話は望んでいないようでした。

 

今時、昔のように、お隣さんと世間話をするのは少なくなっていると思いました。

夫婦共働きで、平日の昼間はいつも留守なので仕方がないのかもしれません。

 

ちなみに、私の住んでいる田舎でも、同じ班で町内会に入らない家が2軒あります。

 

家の周りの清掃が終わったら、今度はみんなで公園やその周りの道路の

清掃でした。

 

私が公園の草を取っていると、近くに、いつも一人で自分の家の前の道路を

清掃しているお婆さんがいるのに気付き、声をかけてみました。

 

お婆さん、今日はお天気がいいですね、きれいに清掃できましたねと言いました。

 

彼女は私に、いつもひとりぼっちで寂しく清掃しているのだが、今日は

みんなと一緒に清掃できるのでとても嬉しいと言いました。

 

続けて彼女の話を聞いてみると、

 

数年前にご主人が亡くなった後、子供のいないひとりぼっちの彼女は自分の家の

前の道路を清掃しながら、すれ違う人に挨拶すると元気が出るそうです。

 

 

私は清掃をしながら少しじっくりと彼女とお話がしたくなりました。

若い人と違って、お年寄りは親しみやすく感じます。

 

私は彼女に人生の中で大切にしていることは何かと聞いてみました。

すると彼女は誠実に生きることだと言いました。

 

実は彼女、ご主人が亡くなった時、ほとんど貯金がなく、お葬式をするのに

お金が足りなくて、妹さんから50万円借りたそうです。

 

彼女はわずかな年金で暮らしているので、毎月2000円しか返せないそうです。

 

妹さんは彼女が生活に困っているのを知っているので、もう返さなくても

いいよといつも言うそうです。

 

私は生活が苦しいのなら、妹さんのご好意に甘えたらと言いました。

 

彼女は言いました、私は今、この世の中で誰からも必要とされていないし、

生きていても何の役にも立っていないと。

 

私は死ぬまでお金を返し続けます、それが誠実であり、必要とされることだと

言いました。

 

彼女は自分が死んでも悲しんでくれるのはただひとりの妹だけだと言いました。

 

私は彼女にもっと明るく楽しい人生を送ってもらいたいと思ったので、

 

私は彼女に、この世の中で誰ひとりとして必要とされない人などいないと

言いました。

 

あなたは元気であなたらしく生きていればそれでいいのです、それだけであなたは

世の中に十分、役に立っているんですよと言いました。

 

彼女を見ると、清掃で身体が熱くなったのか、目から汗が出ているのがわかりました。

 

すると彼女は近くの家に帰り、私の家は貧しくてなんにもないけどと言って

おまんじゅうを持ってきてくれました。

 

私は清掃が終わって家に帰って、もらったおまんじゅうを食べましたが、

私の涙のしょっぱさで、甘さが増してとてもおいしく感じました。