丸裸のお母さん

 

私の会社の同じ部署に、仕事ができなくてミスばかりする女の子がいます。

彼女は他の人に相手にされないからか、私と気が合うのかわかりませんが

よく話しかけてきます。

 

私の部署は交代で休憩をとるので、よく彼女と二人きりになります。

他に誰もいないので遠慮なく話します。

 

彼女は家の中のことを主に話します。

お父さんとお母さんと彼女の3人家族です。

お父さんは出張が多く、月の半分くらいは家にいないそうです。

 

日々、専業主婦である彼女のお母さんが主人公の家庭ドラマが展開されます。

 

お母さんは、お父さんが出張でいないときは朝寝坊して、彼女の朝食の準備が

間に合わないので何も食べずに仕事に来ることがしょっちゅうあるそうです。

 

自分の布団を外に干したまま昼寝をしている間に突然の大雨、目が覚めると

布団がびちゃびちゃ、その夜、彼女の布団に入り込み、一緒に寝たそうです。

 

夜の食事時、お母さんはお酒を飲んで気持ちよくなり、後片付けが面倒になり

そのままうとうとして、彼女に後片付けをさせるそうです。

 

家の中では、彼女の目の前でぶりっと平気でおならをするそうです。

 

彼女が仕事が休みの日、気分が乗らないと言って、彼女に掃除・洗濯を

させて自分はテレビを見ているそうです。

 

私には給料は無駄遣いしないで貯金しなさいと言いながら、お母さんは

お昼には、よく友達とランチに行くそうです。

 

私はこのドラマを聞くのが楽しみになりました。

昨日はどうだったのとこちらから聞くこともあります。

 

話を聞いているうちに、お母さんの性格や行動がすべてわかったような気が

してきました。なんてずぼらな専業主婦だと思いました。

一度、どんな顔をしているのか見てみたくなりました。

 

ある日、仕事の最中、彼女のお母さんが何かの用事があったらしく

彼女を呼んでくれと尋ねてきました。

 

私は彼女にいつも話を聞かせてもらっているのだからご挨拶してもいいかと

聞くと、彼女はいいよと言いました。

 

初めて彼女のお母さんと会いました。

私は驚きました。想像していたお母さんとは全く別人です。

私の頭の中のイメージでは、ぼさぼさ頭で肥満型でだらしなさそうな人。

 

ところが目の前にいる人はきちんとした見なりでスマートで上品そうで、

どちらかというと美人の部類に入りそうな人です。

 

私が、丸裸になったようなお母さんのことを娘からいつも聞いているのを

知らないで

 

「いつも娘がお世話になっています」とすました顔で言う彼女を見ると

上品ぶった外見と家にいる時のだらしない中身の差があまりにも違うので

 

 思わず吹き出してしまいそうで、それを抑えるのが大変でした。

わたしの心の中では大爆笑。いつものあなたはどこに行ったのかと。

 

普通だと、人の外見を見てからだんだん中身を見ていくのですが、

今回は人の中身を先に見て外見を見るという貴重な経験をしました。

 

人は外見だけで判断してはいけないということが十分わかりました。