私にとても厳しい人

 

私は人より仕事が遅く、時間をかけて何とか仕事をこなしていました。

そのため、会社にはいつも一番早く出社して仕事をしていました。

 

私は能力のなさを補うために、額に汗をかきながら時間をかけてもきちんと

仕事をやり切っていました。

そんな姿を見て、人情味のある上司は、よく頑張っているとほめてくれました。

 

ところが人事異動でその上司に代わって、別の上司が赴任してきました。

見かけは優しそうな人ですが、実に厳しい人でした。

 

私の仕事のやり方をすべて否定するのです。

 

まず、仕事場の物の置き方です。

整理整頓ができていない、きちんと場所を決めて元に戻せとか、

よく考えて、仕事がしやすいように要らないものは捨てろとか。

 

机の上の電卓やボールペンの置く位置まで決めさせられます。

ただでさえ仕事に時間を取られているのに、さらに面倒なことをさせるのです。

 

次に、仕事の順番です。

今やっている仕事をすべて書き出せと言う。

期限のある仕事の優先順位を決めて、重要な仕事からやれと言う。

 

期限がなく無駄な仕事はやらなくてもいいと言う。

また面倒なことを言うのです。

 

そのほかにも、誰のために仕事をしているのか考えろとか、その仕事の

やり方はそれでいいのかといちいちうるさい。

それでもいやいやながら、頑張って何とか鬼上司に従いました。

 

私は毎日がとてもつらく、前の上司はとてもやさしかったなと思いました。

 

数か月が過ぎ、ボーナスの金額がきまる人事評価の時期が来ました。

ランクはAからEまでの5段階評価、これだけ我慢してきたのだから

 

すこしはいい評価が付くと期待したところ、今までもらったこともない

最悪のE評価。前より頑張った結果がこの評価でした。

私はこの上司を血も涙もない人情なしの鬼だと思いました。

 

結局、私は一年後、人事異動で他の勤務地に変わることになりました。

 

この頃には上司の考え方にも慣れてきて、仕事のスピードも

人並みくらいに早くなっていました。

 

でも、仕事のつらさは変わりませんでした。

この上司から解放されると思うとうれしくてうれしくてたまりませんでした。

 

最終出社日に仕事を終えて、その上司にあいさつに行ったところ、

ちょっと待ってくれと言うので何かと思うと、メッセージが添えられた

きれいな花束を渡してくれました。

 

鬼の目にも涙か。

 

家に帰ってそのメッセージを読みました。

 

「私は最初あなたの仕事ぶりを見てその誠意はとても素晴らしいものだと思いました。

誰よりも早く出社し文句も言わず、黙々と働く、愛社精神あふれる仕事ぶりでした。

 

でも、あなたの将来のことを考えると、今の仕事のやり方ではいけない、何とかして

あげなければならないと思い、私は大きな愛をもってあなたを厳しく鍛えました、

 

辛かったでしょうが私にできることはすべてやりました。あなたはよく頑張りました。

私はこれからあなたが幸せな人生をおくれることを心より願います。」

 

私は涙が出ました、本当のやさしさの意味が、今、やっと分かったのです。

愛がなければ仕事に厳しく人にやさしくはできませんね。 

その時の気持ちがいままでのブログを書くのにとても役立っています。