こころの地図

 

私は今まで何度も転勤をしているので、多くの人との出会いがあります。

 

ある支店に20代前半の女子アルバイトがいました。

 

彼女は学校を卒業して正社員としてどこかの企業に就職していたようですが

仕事が合わなかったようで、1年くらいで辞めてここに来たようです。

 

ここに来てもう3年以上で、一日6時間で週5日の勤務です。

 

同じ職場で3年もすればほとんどの業務に慣れているはずですが、

彼女はいつもとは少し違うことがあればすぐ人に聞きます。

 

上司に聞くほどではないことは、話しやすいのか自分より後輩によく聞きます。

いつもいつも人に聞きます、彼女は自分で判断することができないようです。

 

聞かれた周りの人は、簡単なことなら、またかと適当に答えています。

私は彼女のことを見ていて、なんと主体性のない子だと思いました。

 

ある時、昼食時間にたまたま彼女と席が向かい合わせになりました。

私はちょっと、いつも優柔不断な彼女をからかってみたくなりました。

 

君はここでアルバイトとして3年も働いているが、何でここで働いている

のかと聞いてみました。

 

彼女は、前の仕事と比べて責任がある仕事ではないし、自分の時間がたくさん

持てるのがいいと言いました。

 

私は、もっと給料のいい仕事に就きたくないのかと聞くと、彼女は給料は

今のままでもいいと言いました。

 

彼女は両親と一緒に住んでいて、食費を少しだけ出すのと、スマホにお金を

使うくらいであまりお金は要らないようです。

 

洋服もシンプルでお化粧にもお金はかけていないようでした。

彼女は今の生活に十分満足をしているようです。

 

私は彼女に、10年先の自分の将来について考えてみたことがあるかと聞きました。

 

彼女はそんな先のことは考えていないし、1年先のことさえ考えていないと

言いました。

 

私は彼女に、今何かやりたいことはないのか聞きました。

 

彼女は自分が何に向いているのかわからないし、やりたいこともわからないと

言いました。

 

そして彼女はいつものように私に、自分は何をすればいいのが聞いてきました。

私は彼女のことはよく知らないし何ができるのかも知りません。

 

そこで私は彼女に今までどんな生き方をしてきたのか聞いてみました。

 

彼女は、親からいつも人の迷惑にならないような人になれと言われて、そのように

してきたと言いました。

 

私は思いました、彼女には自分がなく、人のことばかり気にしていたようです。

 

私は彼女に友達はいるのかと聞くと、ほとんどいないがSNSにはたくさんの

友達がいると言いました。

 

悩みを相談すればそれなりに解決方法が返ってくるようです。

 

彼女は現実の世界では人に迷惑をかけないようになるべく人と付き合わない

ようにしていたようです。

 

私はかわいそうになりました。

 

人は人生においていろいろな苦労をし、また楽しみを味わい、様々な経験を

することで判断力がつき、それが人間力となるのです。

 

彼女は若いのに、一度しかない人生の醍醐味を味わうことなく放棄しているのです。

正直言って私は、いつも物事を人に聞く彼女に、人間としての魅力は感じません。

 

しかし、やがて来る将来への不安がきっと今の彼女を変えるでしょう。

私はそのために、彼女にこころの地図をプレゼントしたいと思いました。

 

今彼女のこころがどこにあるのか広い地図の中から見つけ出しそこに目印をつけます。

そして時間をかけて、彼女が行き着く幸せの島を見つけそこに目印をつけます。

 

人生の道筋をしっかり決めて人に聞くことなく愛を持って歩いてほしいです。

 

たとえそれが茨の道であっても、迷うことなく人生の目的地に無事到着する

ことを祈るばかりです。