自由のない生活

私が新入社員の時、人里離れた山奥で3か月の研修がありました。

これは入社時の新入社員研修ではなく、専門技術や知識の習得のための

研修でした。

 

研修前に先輩社員からその研修のことを聞かされていて、山奥での自由のない

監禁されたような生活は正直、憂鬱に思っていました。

 

私の会社からは全部で5名。全国から集まり、男性ばかりの総勢40数名です。

研修施設の隣は工場で男性従業員が働いており、女性は食堂のおばちゃんのみ。

 

入校式のあと研修の内容を説明され、暗い気持ちになりました。

先輩社員に言われていた通り、自由のない毎日です。

 

朝6時に起床、洗面と身支度を整え、グランドでラジオ体操、その後、

山道を2Kmのランニング、走り終えた人から工場の食堂で朝食。

 

8時から実技研修、結構むずかしく、あっという間にお昼。

昼食後、少し休憩があって午後からは専門知識習得のための講義。

17時に講義が終わり、夕食と入浴。

 

ここから少しまとまった休憩が取れます。

と言っても周りには家もろくにないような田舎でお店もありません。

宿泊のための寮は6畳の部屋に二人ずつ。ここがゆっくりできる唯一の場所。

 

20時から22時までは部屋で自習時間、先生が巡回するので、さぼれません。

22時から消灯で電気を消さないと先生が注意します。

 

こんな生活が3か月も続くかと思うと目の前が真っ暗になりました。

過去には何人かこの生活に耐えられなくて脱出した人もいるようです。

 

日曜日が唯一の休日です。みんな街に出かけて、美味しいもの食べたり、

遊んだり、自由を謳歌します。

 

夕方になると門限があるのでみんな暗い顔をして寮に戻ってきます。

20時からはいつものように自習時間です。

 

でも、人間の適応能力は素晴らしいですね。

2週間くらいが過ぎると、みんなこの生活に慣れ笑顔も出るようになりました。

 

知らない人同士でも、2週間も共同生活をすれば気軽に話せるようになります。

だんだん集団生活にも慣れ、時間が過ぎるのが速く感じてきました。

やがて2か月半も過ぎると研修期間も残り少なくなってきました。

 

最初はいやでいやで仕方がなかったこの研修ですが、規則正しい生活は

慣れると楽なんです。

でも、慣れって、現状に甘えてしまう怖いものかもしれませんね。

 

これからまた、職場に戻り、忙しい仕事をしなければならないと思うと、

このままもっとここで研修を続けたいと思うようになりました。

 

3か月の研修が終わって、元の世界に戻った時は、自由ってこんなに素晴らしい

事だったのかと心から思いました。

街中を歩くと何もかも刺激的で輝いて見えます、心はウキウキ気分です。

 

私の人生の中で、これほど自由のない生活は初めてでしたが、いい思い出です。

 

 今でも私のまわりには自由のない生活の場面がありますね。

 

毎日仕事が忙しくて、朝から夜遅くまで寝る間も惜しんで働いているあなた、

自由のない生活に慣れていても健康には十分気を付けてください。

 

新型コロナで人と人の交流が制限される自粛生活の不自由さ、いつまで続くので

しょうか、慣れてきても悲劇は続かないことを祈ります。

 

いつもスマホが手離せない情報社会、その情報の速さと多さで人は振り回されます。

便利なようで、実は自由のない、心にゆとりのない悲しい世界かもしれません。

メールがなく、郵便が数日かかって届くのんびりした時代がなつかしいです。

 

ブログを書いたり読んだりする時間が十分ある私は、今、自由のある生活を

満喫しています。

ブログの世界にいる私は本当に幸せだと思います。