愛のクリスマス予約

 

先日、私が仕事をしていると、知人の女性から電話がかかってきました。

 

彼女はお願いがあるから聞いてほしいと言いました。

私が何かと聞くと、クリスマスの予約をしてくれないかと言うことでした。

 

実は彼女、あるスーパーに勤めていて、会社からクリスマスの予約の

個人目標が与えられ、それで多くの知り合いに声をかけているようでした。

 

私は彼女とは長い付き合いなので、高いものは買えないけど、協力するから

クリスマスのパンフレットを見せてくれと言いました。

 

次の日のお昼の休憩時間に、食事を早めにすませ、近所にあるコメダ珈琲店

彼女と会いました。

 

彼女と会うのは久しぶりで、もう半年くらいは会っていませんでした。

 

彼女は私のいる会社の元部下で、同じ部署の男性と結婚して退職しました。

私はふたりの部下の結婚式に招待され、ふたりはとても幸せそうでした。

 

そのうちふたりには娘が生まれ、名前を由香と名付けました。

 

父親は由香ちゃんが可愛くて可愛くて、目の中にいれても痛くないほど

可愛がりました。

 

由香ちゃんはよく、大きくなったらパパのお嫁さんになりたいと言って、

彼女を嫉妬させていたようです。

 

父親の仕事が休みの時は、いつも公園に連れて行き遊んでいました。

父親は、由香ちゃんと遊んでいるときが一番幸せだったようです。

 

ところが1年前のことです、彼女の夫は病気で亡くなり、4歳になった娘の

由香ちゃんと彼女は幸せな生活から一転、とても辛くて苦しい生活になりました。

 

父親を亡くした由香ちゃんは悲しくて、いつまでも泣き続けたそうです。

 

彼女は生活のために、今のスーパーでレジの仕事をすることになりました。

 

誰にでもできるような仕事に見えますが、実は大変なお仕事で、従業員同士の

人間関係や体調の悪い時のレジ待ちの行列、お客との接客トラブルなどがあり

 

決して楽な仕事ではないようです。

 

彼女は、女手ひとつで幼い子を養う辛さを心の底から感じたそうです。

 

襲い来る強い不安と絶望感に背中を押され、死の世界に飛び込もうとした時、

残された可愛い自分の子供のことを想うと、足が踏みとどまったそうです。

 

でも彼女は、死ぬ気で頑張ったら、世間には優しい人がたくさんいることが

分かったそうです。

 

辛いながらも、多くの人々に助けられ、その間にはこころの通った多くの恩人が

できたそうです。

 

彼女は少しでも世の中の役に立って恩返しをしたいと頑張って働いています。

 

話しはクリスマス予約のことに戻ります。

 

父親が生きている時には、クリスマスには父親がいちごのケーキとローストチキンを

買ってきて、きゃっきゃと大喜びする由香ちゃんを見てふたりは喜びました。

 

しかし、昨年のクリスマスは由香ちゃんとふたりで寂しいクリスマスを迎えました。

お金がないので小さなショートケーキをふたりで半分ずつ食べました。

 

由香ちゃんは「大好きなパパへ、天国で幸せになってね、届いたらお返事くださいね」とお手紙を書いてクリスマスツリーに飾りました。

 

それを見て、彼女は悲しくて涙が出ました。

 

私はそんな彼女がとても苦労しているのを知っているので、喜んでクリスマスの

予約をしてあげたいと思いました。

 

パンフレットを見せてもらうと、由香ちゃんが喜んでいた、いちごのケーキと

ローストチキンがありました。

 

私は注文書にいちごのケーキとローストチキンに〇をしました。

 

そして天国のパパよりお返事が届くように、送り主の欄に天国のパパ、

受取人に可愛い由香ちゃんと書きました。

 

きっと、パパからのお返事に、由香ちゃんは喜んでくれることでしょう。

 

私はこれはあなたと由香ちゃんへのプレゼントと言って代金と注文書を

彼女に渡しました。

 

今年のクリスマスは少しでも楽しく過ごしてほしいという私の願いでした。

 

そのとき彼女の目には、涙が浮かんでいまし