お金持ちになる夢

 

私の部下に、いつもお金が欲しいと言うのが口癖の社員がいます。

給料明細を見ては、これだけつらい思いをしてこれだけかとため息をつきます。

 

私は彼に、会社にこき使われた我慢料だとよく言います。

 

彼はお金がたくさんあったら我慢することなく楽しく生活ができるのにと言います。

私は彼に、お金があったら何をしたいのか聞いてみました。

 

彼はまず、働かなくていいので時間が自由に使えると言いました。

24時間が自分の自由な時間、誰からも束縛されない希望の生活。

 

それから好きなものが買える、例えば、タワーマンションの最上階、高級外車。

好きなものが食べられる、高級レストランでのフランス料理のフルコース、

和牛の特上ステーキ、松茸たっぷりのすき焼き。

 

好きな所へ行ける、超豪華客船による世界旅行、宇宙船による月旅行。

好きなサービスが受けられる、難病の時の最先端の高度医療。

 

彼はいくらお金があっても足りないかもしれないと言いました。

 

私は彼とはまったく考えが違っています。

 

給料明細を見ると、私の仕事に対して金額が多すぎると思い、いつも

会社に申し訳ないと思いながら感謝しています。

 

以前に何度も書きましたが、私は子供の頃、食べるのにも苦労するような

貧しい家庭で育ったので、給料は生活できるだけもらえれば十分なのです。

 

彼は私に、もっとお金はほしくないのかと聞きました。

私は、お金はほしくはないがお金持ちにはなりたいと言いました。

 

彼はそれはどういうことかと聞いてきました。

 

私が子供の頃、家が貧しくて、甘くておいしいメロンを食べたことは一度も

ありませんでした。

 

いつどんな人がメロンを食べることができるのか想像もできませんでした。

 

いつもマクワウリを食べながら、本当のメロンとはどんな味なのか未知の味

を頭に描いてこころで味わいました。

 

お店に並べてある、食べ頃の日付けが付いた高級メロンを見ては、いつかは

食べてみたいと思っていました。

 

私はその頃、大人になって自分で稼げるようになったら、一番高いメロンを

買って、ひとりで全部食べるのが夢でした。

 

そして今の会社に入社して初めてもらった給料で、今まで夢だったメロンを

買って食べました。

 

最初の一口は、この世のものかと思うほどの甘さと香りで私のこころは酔いました。

 

しかし食べ続けているとだんだんその感覚が薄くなり、最後はもういいやと

言う満足感と引き換えに私の夢は消えてしまいました。

 

私は、食べたことのないメロンを手に入れようとしていた時が、一番幸せだった

のかもしれません。

 

話しは戻りますが、私は彼の疑問に答えました。

私は彼に、お金持ちがどんな生活をしているのか知らないと言いました。

 

彼が言ったように、時間とモノとサービスを十分に手に入れることができて

夢のような生活をしているかもしれません。

 

でも、私の読んだ本には、何でも手に入るお金持ちは、今の何不自由のない生活が

壊れることの不安でびくびくしていると書いてありました。

 

でも私は貧乏なので失うものは殆どありません、あるのは、お金持ちになれる

かもしれないという大きな夢です。

 

だから私はお金が実際手に入らなくても、彼が言ったような夢のような生活が

できるかもしれないという希望があります。

 

もしかしたら、希望を持っている私は、お金持ち以上に幸せなのかもしれません。

 

メロンを食べる前の夢とお金持ちになる夢は同じだと思います。

食べたい、なりたいと思っている時が一番幸せだと思います。

 

実際にはお金がなくて辛い思いをしている方もたくさんいると思いますが、

少しでも気持ちが前向きになってもらえればと思います。