田舎者の私

 

私の仕事の休みの日は、お天気がよければいつもウォーキングをします。

私は、お天気がいい日に、じっと家にいるのが我慢できないのです。

 

私のこころが私の手を引き、早く早くと外へ導きます。

私が住んでいるところは緑に囲まれた、自然豊かな田舎です。

 

私は静かな自然の中を歩きながら、ここも都会と同じ日本、もし地形がよかったら

都会とおなじようにビルが建ち並んでいたかもしれないと思いました。

 

私は目の前の大自然を背景に、写真で見た、六本木ヒルズスカイツリー

建っているような場面をイメージしてみました。

 

あまりにも不自然で、静寂から喧騒へとうまくこころが切り替わりませんでした。

 

こんな発想は田舎者の私だからできるのであって、都会に住む人にはできない

かもしれませんね。

 

私は田舎に生まれた幸運を神に感謝しました。

都会が悪いと言っている訳ではありません。

 

ただ、私が生きていくのには田舎の方が合っているというだけのことです。

 

私は自分のペースでゆっくり歩くことができます。

都会の朝の駅のように、急いで歩かなければ、迷惑になるわけではありません。

 

私はたまに、出張で東京に行くことがありますが 、田舎と違ってホテルから外には

あまり出ないで、できるだけホテルにいるようにしています。

 

あの人混みの中を歩くのがいやなんです。

 

私が都内を移動するときは時間がかかっても、極力、私ののんびりした性格に合う、

各駅に停まる電車を利用します。

 

あの通勤ラッシュの激しさは、人のこころを鍛えるのでしょうか、戦闘モード

にならないと乗れません。

 

私が乗り換えのことで人に尋ねようとしても、たまたまかもしれませんが、

殺気立って先を急ぐ人たちの眼中に、私はありませんでした。

 

仕方なく人混みを避け、やっと見つけた駅員さんに聞きました。

私に親切な駅員さんは、まるで天使のようにやさしく感じました。

 

田舎者の私にとって、東京の人って、とても冷たく感じました。

おなじ人間なのに、血が通っていないのかと思いました。

 

それから時間が経って、お昼前に、空いた電車に乗った時、隣に人の良さそうな

お婆さんが座っていました。

 

お婆さんと言ってもさすが東京人、田舎のお婆さんと違って、こぎれいな格好で

上品に見えました。(ごめんなさい、田舎の人でもきれいな人はたくさんいますよ)

 

私は相手にしてもらえるのかどうか不安に思いながら、恐る恐る話かけてみました。

朝はあんなにラッシュなのに、この時間は電車が空いていますねと私は言いました。

 

すると彼女は、あなたは東京の人ではないんですねと言いました。

 

私が朝の駅のことを話すと、彼女は、朝の時間はみんな忙しくてほかの人には

かまっていられないのよと言いました。

 

東京の人だって、人情味のある人はたくさんいるとも言いました。

でもあの厳しさを知って大変だったでしょうとやさしく私に言いました。

 

私は東京にも、見ず知らずの私に、こんなにやさしく応えてくれる人はいるのだと

ほっとしました。

 

私が出張で田舎から上京したことを伝えると、田舎暮らしはいいですねと言いました。

 

それから彼女は私がどこから来たのか聞いてきたので、私の住んでいるところを

言いました。

 

すると彼女は驚きました。

 

実は彼女、私の住んでいるところからクルマで30分くらいの近くに生まれ住んで

いたのが、結婚して御主人とともに東京に移り、40年が過ぎたと言いました。

 

東京の人と思っていた彼女は、実は、私と同じ田舎で育っていたのでした。

それから数駅一緒に話しましたが、気をつけてねと言って彼女は駅で降りました。

 

どこに住んでいても、やさしい人はやさしいのがわかりました。

 

私は反省しました、東京の人が冷たいのではなく、その温かさを理解して

いない私の方が冷たかったようです。

 

私は愛されることを期待していたのかもしれません、愛とは与えるものです。

 

私は朝のラッシュを緩和するためにも、私はずっと田舎で暮らすことが東京の

人への愛だと思いました。

 

私はやっぱり田舎が大好きです。