こころの傷

 

私のブログは、書くことがなくなると何年も前のことを思いだして、

こころに残っている、その時の気持ちを書くことがよくあります。

 

今回は、今から20年くらい前のことです。

 

私がいた職場の事務所にはパソコンが4台しかありませんでした。

従業員が100名くらいいたのですが、みんなで共有して使っていました。

 

パート従業員やアルバイトは、ほぼ使わないので、よく使うのは各部署のリーダーと

その他の正社員で、その数は10名前後でした。

 

普段はどれか1台は必ずと言っていいほど空いていました。

 

問題のその日は、なぜかパソコン業務が集中し、パソコンが空いていませんでした。

 

私は本社に報告のメールを送るために、何度も事務所に来ましたがずっと空いて

いませんでした。

 

夕方になってやっとパソコンが空いていたので使おうとすると、誰かが途中まで

資料を打ち込んだままでした。

 

私はメールを打ち込むために画面を消そうとすると、保存しますかと表示が出ました。

私はうっかり、保存をしませんでした。

 

そしてメールを打っていると、後ろから、「保存はしてくれたんでしょうね」と

声がかかりました。

 

振り向くと、他の部署で3年後輩のリーダーでした。

 

パソコンを使用している最中に、突然、取引先が訪ねて来たので、それまでの作業を

まったく保存しないで数分パソコンから離れていたようです。

 

私は彼に「ごめんなさい、うっかり消してしまった」と答えると、彼の

態度が急変しました。

 

彼は「どうして保存しないのか、俺が3時間かけて、明日本社に持って

行くための資料を作っていたのに、ばかやろー、そこをどけ」と座っている

椅子から私を押しのけました。

 

私は上司からもそんなきついことを言われないのに、3年後輩の彼に言われて

とても大きなショックを受けました。

 

私は隣のパソコンが空いたのでそこに移って5分ほどでメールを作成して

席を立とうとすると彼は私をにらみつけ、チェッと舌打ちをしました。

 

そのとき私は彼と同じリーダー職で対等の立場でした。

 

彼は私のいる支店の中でも一番のやり手で、仕事も早いし、責任感の強い男でした。

普段から仕事の出来ない私を見て軽蔑していたように思いました。

 

私が仕事が終わって帰り支度のために事務所に戻ると、彼はまだパソコンに向かって

先ほどの資料作りの続きをしていました。

 

私の姿を見た気性の荒い彼は、腹いせに、隣のパソコンの椅子をおもいっきり

足で蹴飛ばし、椅子は大きな音を立てて倒れました。

 

私は怖くなってそのまま急いで事務所を出ました。

 

まったくこころが通じていない、それも後輩からの仕打ちは、まるでやくざから

目をつけられたような恐怖の感覚でした。

 

それからは私は事務所に行くときはできるだけ彼と会わないように、彼が

事務所にいない時間を選んでいくことにしました。

 

まだ誰かほかに人がいればいいのですが、二人っきりになるのは絶対嫌でした。

 

数日後には彼はその時の怒りはおさまったのでしょうが、私が受けたこころの

傷は治ることはありませんでした。

 

彼の姿を見るたびに、こころが怯え、会社を辞めたくなるような辛い気持ちでした。

 

それから3ヶ月後、彼は他の支店に異動となりほっとしましたが、

そのこころの傷は半年、いや、1年は治らなかったと思います。

 

3ヶ月で彼と離れることができたのは本当に幸運だったと思います。

 

こころの傷は時間をかけてだんだん塞がってきました。

 

その後、人事異動が発表されるたびに、彼と一緒にならないことを祈りました。

20年経った今でもその時の事を思い出すといやな気持ちになります。

 

私はたくさんの人のブログを読みますが、こころの病を持った人のブログを読むと

 

こころの病は闘う人生だとか

 

人は気合や根性で治せと言うが、なってみなければわかってもらえない苦しみだとか

 

生きているから苦しい、だから死にたいとか

 

薬が効かない、楽になりたい、早く死なせてなど

 

書かれた人の壮絶な苦しみが伝わってきます。

 

私のその時の苦しみはその人たちと比べれば、まだ軽い方だったような気がします。

 

こころの病で苦しんでいる方にはこころよりお見舞い申し上げます。