気が合わない人

 

気が合わない人がふたりきりで仕事をするのはとても苦痛ですね。

今回はそんな過去のお話です。

 

ある日、支店長が私に言いました。

今度、私の部署に中途採用の社員が入るので仲良くやってくれと言うことでした。

 

私はどんな人なのか聞いてみました。

 

私より年齢が2歳上で、勤めていた会社で課長職をしていたようですが、不景気で

会社が倒産して、ここに来たようでした。

 

私はその人が課長職というのがとても気になりました。

 

その当時、私は支店の一部署のリーダーでしたが、課長といえば本社のお偉方で、

私は仕事でミスをしてよく叱られていました。

 

年上であり、そんな立場だった人と一緒に働くなんて、私はどうしようかと

とても暗い気持ちになりました。

 

それから数日後、彼は私の部署にやってきました。支店長に軽く紹介されて

私の部署で働き始めました。

 

いくら元課長でも、私の会社のやり方に従ってもらわなければなりません。

私の部下に細かい仕事のやり方を教えてもらうようにしました。

 

しかしながら、シフトの関係で勤務終了前の1時間は彼とふたりきりになることが

よくあります。

 

必要最低限の仕事の指示はしますが、無言の状態が続きました。

 

相手は元課長、幾多の修羅場を乗り越え、私より責任のある仕事をしていたに

違いありません。

 

雰囲気的に私は彼とは気が合わないと思いました。

 

無口な彼は私のことをどんなふうに思っているのでしょうか。

お互いに腹の探り合いです。

 

そんな日が続くと私は彼と一緒に働く時間がとても苦痛になりました。

その沈黙の重苦しい雰囲気がとてもいやでどうしたらいいのか悩みました。

 

そんな時、私は大好きなマザーテレサの名言を読み返しました。

 

「この人の中で一番素晴らしいものは何だろう」

「愛されることより愛することを、理解されることよりは理解することを」

 

私はこのふたつの名言に救いを求めました。

私は彼の素晴らしさと、彼を理解するためにはどうすればいいのか考えました。

 

そのためには、彼のこころの扉を開いてもらわなければなりません。

私に対する警戒心を取り除き、安心して扉を開いてほしいのです。

 

まず私のこころの扉を開きました、ある時は恥ずかしさで赤面し、またある時は

馬鹿にされても仕方のないような愚かな話をし、警戒心をしずつ取り除くように

しました。

 

暇な時は缶コーヒーを買ってきて、差し出し、ふたりで飲んだりしました。

 

私は、バカでお人好しの性格をさらけ出し続けました。

 

その時は、なんで私はここまでしなければならないんだろうと思いました。

 

でも、その甲斐があって少しずつ彼のこころの扉が開いてきました。

 

最初の頃はお天気の話程度でしたが、食べ物のこと、趣味のこと、家庭のことへと

話がだんだん進んできました。

 

 そのうち、彼自身のことも話してくれるようになりました。

 

彼は、前の会社では課長職だったのですが小規模の会社で、社員数が少ないので

年功序列で、入社して数年で課長職になり、その肩書で取引先を回ると、

丁寧に対応してくれたと言いました。

 

課長といっても名ばかりのようなものだと言いました。

 

彼は元勤めていた会社よりここは随分規模が大ききので、自分が通用するのか

不安な気持ちでいたようです。

 

お互いのこころの扉が全開となりました。

 

彼はとても繊細なこころの持ち主で誰にも優しい人だとわかりました。

それからは、お互いを理解したふたりはとても仲がよくなりました。

 

彼は1年後、他の支店に転勤となりましたが、今でも彼とはとても仲の良い

友達として付き合っています。

 

もしかしたら、あなたが気が合わないと思っている隣の人も、お互いを

理解すれば、本当はとても気が合う人かも知れませんよ。