残された日々

 

 先日書いた記事「同期入社の固い絆」のがんで死去したよっちゃんの手記が

見つかりました。

 

読みづらい箇所がたくさんあり、最後の方は文字になっていませんでしたので

私が読みやすいように要約して編集しました。

 

 

                                 残された日々

 

私は大腸がんが再発したと言われました。 

医者がきっと誤診をしているに違いないと自分で勝手に思いました。

しかし事実は変わりませんでした。

 

私にはまだまだやりたいことは山ほどあります。

 

私は何か悪いことをしたのでしょうか、なぜ私はこんな目にあわなければ

ならないのかと神を怨みました。

 

絶望で目の前が真っ暗です。

 

私は神様にお願いをしました、私の大切なものはすべて差し上げます、

一生、神様の召使として誠心誠意お世話をさせてもらってもかまいません、

 

どうか私を元のように元気な身体に戻してくださいと。

 

世のなかには死ぬ気で頑張るとか言ってる人々がいますが、軽々しくそんな事を

言わないでほしい、本気でそう思うなら私と代わってほしい、死ぬことの本当の

辛さがわかるから。

 

しかしその願いもかなわず、だんだん私の身体は衰弱してきました。

 

体力をつけるためには無理をしてでも食事をとるようにしましたが、

そのうち食べようとしても吐き気のほうが強くなり、喉を通らなくなりました。

 

もう私はだんだん体力がなくなり、気力もなくなりました。

窓の外を流れる雲のように時間がもっとゆっくり過ぎてほしい。

 

私は孤独だ、周りの先生や看護師さんには明日があり夢がある、気持ちを共有

したくてもそれは無理なこと、とても寂しい。

 

最近、お見舞いに来てくれる人は、私を見て驚きで顔がこわばり、涙を流すよう

になりました。

 

私は最近鏡を見ていないので、痩せてやつれた顔はどんなになっているのか

見てみたくなり、看護師さんに手鏡を持ってきてもらいました。

 

鏡をのぞき込むと私は驚きました、これは本当に私なのかと。

思わず鏡をそむけました、気持ちが悪く見ていられません。

 

これは宇宙人なのかと思うほど私は変わり果てていました。

 

頭には髪の毛が一本もありません、頬の肉はなくへこんでいます。

眉毛もなく、やつれた顔に耳が大きく開いています。

 

そして何より驚いたのは、目が異常に大きくなりこぼれそうに飛び出しているのです。

目のまわりの肉が無くなったせいで、目は変化してないのにそのように見えるのです。

 

それを見た瞬間、私は生きる気力が全くなくなりました。

 

こんな姿もう誰にも見られたくありません、面会に来てもらいたくないと思いました。

 

観念しました、私はもう助からない、これからのことを考えても仕方がないので、

過去の思い出を辿ることにしました。

 

子供の頃はわんぱくで小学校の先生によく叱られたことや、社会人になっても

仕事で失敗して会社に迷惑をかけたことなどいろいろな思い出が浮かんで

きました。

 

生まれた時から今までに多くの人に助けられてここまで生きてきました。

妻に子供に多くの友人・知人そして世界中の人々に。

 

その人たちに恩返しもできなくなると思うと悲しくなりました。

 

 私がこの手記を書いていることは誰も知りません、死ぬまでこれは見せません。

 

私が死んだあと、この手記を見ているあなたに私はどうやって恩返しをして

いいのかわかりません。涙を流すこともできないのです。

 

私にはひとつだけ希望があります、私をやさしく愛してくれたお母さん、

きっとあなたはあの世でも優しく私を迎えてくれるでしょうね。

 

だんだん最期が近づいてきました、苦しい、とても辛い、この激しく厳しい痛みは

神様からの最後のプレゼント、死の恐怖を忘れることができる精神安定剤

 

私は一刻でも早くこの苦しみから逃れたい、誰か力を貸してほしい、楽になりたい。

おねがいだから誰か私を早く殺してくれ~・・・・・・・・・・・・・・・・・・。