真っ赤に熟した柿の実

            ある高齢者の日記です。

 

老人ホームなんて怖い。

家族と住み慣れた家でこのままのんびり暮らしたい。

何でもするからここでずっと暮らしたい。

 

それでも願いは叶わず今日から老人ホーム。

 

見知らぬ人との共同生活。帰りたい、家族と一緒に暮らしたい。

とても辛くて、悲しい。何も食べたくないし、夜も眠れない。

 

みんなで集まる食事の時間は苦痛だ。

知らない人ばかり。無言で食べる食事はつらい。

 

お風呂の時間は地獄だ。

多くの人が順番待ち、限られた時間の入浴、怪我でもされたら職員の責任、

洗い場担当の職員は、長時間の熱気でいらだち、

立ち上がるな、歩くな、怪我をするぞと怒声が響く中で恐怖を感じる。

 

私のこころは色あせました。

 

もう戻れない、あの家族団らんで楽しかった生活に。

 

その数か月後、あまりにも落ち込みのひどさに見るに見かねて、

優しい職員さんが私の気持ちを聞いてくれるようになりました。

 

 あなただけじゃない、みんな同じ気持ちよと慰めれ、気持ちが少し楽になりました。

何度も私の気持ちを聞いてもらっていると気持ちがだんだん楽に

なってきました。

 

ある日、窓から外を見ると赤いものが見えました。

それは真っ赤に熟した柿の実でした。

 

今まで、色あせていた心では、毎日見ていたはずのあの柿の真っ赤な色

気が付きませんでした。

 

私の心にがついたんです。

 

それからの私は大きく変わりました。

 ここで嘆き悲しむのはやめて精一杯楽しく生きようと決心しました。

 

同じ気持ちで沈んでいる多くの人に話しかけました。

心が通じ、すぐ仲良くなりました。

 

今では施設一番の人気者となり、楽しく車いすで生活をエンジョイ

しています。

 

(気持ちの持ち方で人生まったく変わるものだと感じました。)